マスタング用V8にミケロッティの優雅な美貌 メカニカ・マニエロ GT4700(1) 既存グランドツアラーへの反論

公開 : 2026.07.05 17:45

既存グランドツアラーへの反論として作られた、メカニカ・マニエロ GT4700。マスタング用のV8エンジンに、ミケロッティによる均整の取れたボディ。UK編集部が1台限りのレア車をご紹介。

既存グランドツアラーに対する具体的な反論

フェルッチオ・ランボルギーニ氏は、フェラーリの顧客対応に納得できず、自らスーパーカー・ブランドを立ち上げた。オラチオ・パガーニ氏は、ランボルギーニが複合素材の将来性へ理解を示さないことに見切りをつけ、新たな成功を勝ち取った。

対してアンジェロ・マニエロ氏は、さほど我の強い実業家というわけではなかった。それでも、今回ご紹介するメカニカ・マニエロ GT4700は、既存グランドツアラーに対する彼なりの具体的な反論だった。

メカニカ・マニエロ GT4700 (1967年/ワンオフモデル)
メカニカ・マニエロ GT4700 (1967年/ワンオフモデル)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

GT4700は、世界中を探しても1台しか見つからない。1967年に発表されると少なくない注文を集めたが、実際に作られたのはプロトタイプだけだった。

スタイリングは、巨匠ジョヴァンニ・ミケロッティ氏。エレガントな姿にV8エンジンの大パワーを秘め、優れたシャシー技術にあることを踏まえると、残念な事実といえる。

自動車開発の経験がなかったメカニカ・マニエロ

この数奇な1台を知る時、何より驚かされるのが、GT4700をカタチにした企業は自動車開発の経験を持っていなかったこと。もとはアンジェロの父、ゲリーノ・マニエロ氏が19世紀後半に創業した、農業機械を製造する工場だった。

そのモト・アグリコラ・インダストリアーレ社は、製造品質の高さで評判が良かった。事業は順調に成長し、1947年に経営は息子へ引き継がれた。

メカニカ・マニエロ GT4700 (1967年/ワンオフモデル)
メカニカ・マニエロ GT4700 (1967年/ワンオフモデル)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

1950年代は戦後の経済成長が後押しし、フォークリフトやクレーンなど、産業機械分野にも進出。メカニカ・マニエロへ社名は改称され、工場はトリノの北東に位置する、マセラへ移されている。そして、アンジェロは根っからのクルマ好きだった。

成功者として、彼は1960年代半ばに複数の高級グランドツアラーを所有するようになっていたものの、納得していなかった。身長の高い大人が、キャビンで快適に過ごせないことへ不満を抱いていた。実用性が、ベーシックなモデルへ及ばないことにも。

アンジェロが関心を抱いたアメリカ製V8エンジン

決定的なキッカケは、マセラティ3500GT。通勤のため、アンジェロはフェリーを利用していたが、乗船する度にマフラーはスロープに干渉した。この事実をマセラティへ伝え、排気系の改良を求めたが、きっぱりと断られたらしい。

開発時点で気付きそうな課題にも向き合わない姿勢へ、彼は憤慨。自らの理想に基づいたクルマを作ろうという、勇敢な決断をすることになる。機械製造で成功しており、予算も充分にあったことを踏まえれば、無茶な発想ではなかったといえる。

メカニカ・マニエロ GT4700 (1967年/ワンオフモデル)
メカニカ・マニエロ GT4700 (1967年/ワンオフモデル)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

興味深いことに、彼自身がまとめたエンジンの比較表が、車両とともに残されている。そこには、マセラティ・セブリングやフェラーリ250GT カリフォルニア、ジャガーEタイプシボレーコルベットなどに載ったユニットの性能が、一覧で記されていた。

強力で耐久性に優れるアメリカ製のV8エンジンへ、アンジェロが関心を抱いていたことは間違いないだろう。当時の英国製スポーツカー、ACカーズ 428やジェンセンC-V8などが、それらV8エンジンを採用していたことも影響を与えたはず。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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