フェラーリ用アイデアを小さく展開 メカニカ・マニエロ GT4700(2) 拒絶された量産化 具現化された1人の強い想い

公開 : 2026.07.05 17:50

既存グランドツアラーへの反論として作られた、メカニカ・マニエロ GT4700。マスタング用のV8エンジンに、ミケロッティによる均整の取れたボディ。UK編集部が1台限りのレア車をご紹介。

フェラーリ用のアイデアをGT4700へ展開

フェラーリの輸入代理店を北米で営んだルイージ・キネッティ氏は、フェラーリ330 GTをベースにした独自ボディを、ジョヴァンニ・ミケロッティ氏へ依頼していた。だが、1967年のスイス・ジュネーブ・モーターショーに、計画は間に合いそうになかった。

そこでミケロッティは、自身のアイデアをメカニカ・マニエロの新しいグランドツアラーへ展開することを決める。果たして、同年のショーに出展されたのがGT4700だ。

メカニカ・マニエロ GT4700 (1967年/ワンオフモデル)
メカニカ・マニエロ GT4700 (1967年/ワンオフモデル)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

反響は大きく、お披露目された初日に、24名の購入希望者が予約金の支払いを申し出たとか。レーシングチームを営んだジョルジュ・フィリピネッティ氏は、その可能性に魅了され、50台もの追加生産を要望したらしい。

ちなみに、330 GTがベースのキネッティ・スペシャル・フェラーリは、後に完成している。ペブルビーチ・コンクールデレガンスにも姿を表しているが、確かにフロントマスクやボンネット、バンパーのラインなどは、GT4700と似ているように思える。

1人の男の強い想いが見事に具現化

量産化が期待されたメカニカ・マニエロ GT4700だったが、同社を率いたアンジェロ・マニエロ氏は、すべての購入申込みを拒絶した。モーターショー終了後、プロトタイプをブランド唯一のクルマとして、手元に残すことを決めていたようだ。

多少の調整を受け、彼へGT4700が納車されたのは1967年11月。だが、カーブでタイヤがフェンダーに擦れることがわかり、前後のフェンダーラインが改良されている。その作業時、部分的に異なるブルーで塗装されたが、なぜか修正されることはなかった。

メカニカ・マニエロ GT4700 (1967年/ワンオフモデル)
メカニカ・マニエロ GT4700 (1967年/ワンオフモデル)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

それから60年余り。GT4700は、完璧なオリジナル状態にある。美しく速いだけでなく、人間工学に優れ普段使いへの妥協もいらない、魅力的なグランドツアラーを欲した、1人の男の強い想いが見事に具現化されている。

現在のオーナーは、2009年に初めて目にしたそうだが、当時はまだアンジェロご本人が維持していた。彼が100歳を超えた2015年に、売却へ同意したという。

キーを回した瞬間に明らかになる事実

その時点での走行距離は6000km以下で、2026年でも7000kmに届いていない。パッチワーク状に色が異なる塗装は、1967年のまま。大きなセンタースピナーで固定される、14インチのラッジ社製アルミホイールもオリジナルにある。

歩み寄ると、驚くほどコンパクト。全長は4200mm、全幅は1680mmしかない。サイドプロポーションは均整が取れ、高めのルーフラインが調和している。後方には充分に広い荷室が備わり、荷物を固定できるストラップが用意されている。

メカニカ・マニエロ GT4700 (1967年/ワンオフモデル)
メカニカ・マニエロ GT4700 (1967年/ワンオフモデル)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

詳細を知らなければ、イタリア製のツインカムエンジンが載っていそうに思える。しかし、キーを回した瞬間に事実は明らかになる。フォード由来のV8スモールブロックが始動すると、威圧的なビートが打ち鳴らされる。

インテリアの製造水準は高く、ワンオフモデルとは思えないほど。赤褐色のレザーで仕立てられたシートやドアパネルも、完全に当時の姿を保っている。ベンチレーション機能は備わらず、試作止まりであることを物語る。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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