【ジャイアント・キラー】MG J4レーサー ブガッティやアルファに挑んだベビーK3 後編

公開 : 2020.11.15 18:50  更新 : 2020.12.08 08:18

当時のようにエンジンは熱いまま

人影のない、郊外の開けた道を運転する。パワーバンドを保って走るMG J4は、スムーズに路面を進み、カーブを驚くほどのスピードで縫っていく。かつて、ハミルトンが驚異的な速さを残したことを、証明するような走りだ。

ステアリングは軽快でダイレクト。ショート・ホイールベースのクルマを鋭く旋回させるのに充分な反応と、正確性を備えている。

MG J4レーサー(1932〜1933年)
MG J4レーサー(1932〜1933年)

ハイトの高い細身の4インチ・タイヤを履き、ややナーバスなところもある。それでも高速コーナーでのシャシーは引き締まり、まとまりが良い。スーパーチャージャーでフロントの荷重が増えているが、アンダーステアの気配もない。

ケーブルで制御するドラムブレーキは、高速域では注意が必要。コックピットに収まると、素早い変速と高回転域でのエンジンパワーを、つぶさに体験できる。風光明媚な英国東部、サフォークでのMG J4のドライブは、この上なく楽しい。

ニューマーケットのブランチズ・パークでかつて開かれた、バーシティ・スピードトライアルを戦ったMG。今いる場所からも、そう遠くはない。

18世紀に建てられた住宅は、多くが取り壊されてしまった。しかしMG J4は、生まれた時と変わらず、活気に溢れている。若きレーサーのように、スーパーチャージャーを載せたエンジンは熱いままだ。

1933年、二十歳でこのMG J4をドライブしたルイス・フォンテス。筆者の今とは比べ物にならないほど、特別な体験だったに違いない。

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