【シンプルなオープン2シーター】 TVR Sシリーズ 英国版クラシック・ガイド 泣き所はシャシー 後編

公開 : 2020.11.15 16:50  更新 : 2021.02.17 17:44

英国ブラックプールを拠点とするスポーツカー・メーカーのTVR。新体制のもとで生まれたSシリーズは、優れた設計と信頼性で、クラシックとしての注目が高まっています。しかしシャシーのサビは泣き所。英国編集部が解説します。

TVR Sシリーズの中古車 購入時の注意点

text:Malcom McKay(マルコム・マッケイ)
photo:James Mann(ジェームズ・マン)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
TVR Sシリーズを購入するなら、まずルーフを閉じて試乗し、異音がないか確かめる。V8エンジンは、全回転域を通じて勇ましいサウンドを響かせる。V6エンジンは気持ちよく吹け上がる。回転数が上がるほど、パワーが高まっていく。

どちらのエンジンも、トルクは太く柔軟。2.8L V6のギア駆動カムシャフトには、ノイズ対策としてファイバー製のギアが用いられ、破損するケースがある。アルミニウム製の対策ギアはあるが、若干うるさい。

TVR Sシリーズ(1987〜1994年/英国仕様)
TVR Sシリーズ(1987〜1994年/英国仕様)

2.9Lでは、チェーン駆動になった。いずれも、カムの摩耗で出力が落ちることはある。

V8エンジンは通常15psi、高速走行時には25psi以上の油圧が欲しい。V6エンジンは、さらに高圧。エンジンはリビルドが必要になるまで、24万kmから32万kmくらいは保つ。

2.8L V6の場合、無鉛ガソリンに対応していない。しかし、バルブシート・インサートが硬化するまでは、普通に使える。添加剤をガソリンに混ぜることで、対策も可能。

トランスミッションは堅牢で、不具合は生じにくい。変速がスムーズなことや、クラッチのつながりを確かめる。

サスペンションの劣化も、年式を考えれば当然。ドライビング体験の楽しさに影響が出る。ダンパーとブッシュ類、ステアリング系の交換は前提として、予算を見ておきたい。

ブレーキは、一部のクルマでリアがドラム。4輪ともにディスクなら、効きも素晴らしい。ガレージに長期保管されていたクルマの場合、シリンダーやピストンが固着しやすい。電気系統の確認も忘れずに。パワーウインドウは、特に確かめたい。

不具合を起こしやすいポイント

シャシー

アウトリガーは特に傷みやすい。場所を問わず、パウダーコーティングが剥がれると錆びる。事前によく確認したい。アウトリガーの交換は、溶接ですべてのポイントを固定する必要がある。

ボディ

塗装の状態より、グラスファイバーの状態が大切。沈み込みやひび割れ、星型のキズなどを観察して確かめる。塗装色のムラも確かめたい。グラスファイバーの修理と全塗装は、安くはない。

エンジン

TVR Sシリーズ(1987〜1994年/英国仕様)
TVR Sシリーズ(1987〜1994年/英国仕様)

長期的にメンテナンスを受け続けていることを確かめたい。特にV8では、手入れが悪いとオーバーヒートやクーラントの漏れ、エンジンオイルの漏れ、ヘッドガスケットの破損などにつながる。

V6エンジンでは、部品が出てこない場合がある。手入れされていれば堅牢で、リビルドが必要になるまで長距離を走っているケースは少ない。アルミニウム製のV8エンジンは、V6より耐久性で劣る。

ラジエターの不調でオーバーヒートする例も。オイルとクーラントが混ざって乳化している場合は、その兆候の可能性がある。

サスペンションとステアリング

ブッシュ類の劣化や、ダンパーのガス漏れを確かめる。中にはアフターマーケット製の強化版が入っていることも。ステアリングラックも摩耗する。すべて乗り心地やハンドリングに大きく影響する。

インテリアとソフトトップ

摩耗や破損などは珍しくない。部品がなくなっていたり、機能しない部分がないか、すべてを確かめる。細かな仕様変更は、同じモデルの生産途中でも、何度も重ねられている。

ソフトトップは水漏れすると、内装を湿らせる。2枚のハードパネルと、折りたたみ式のロールオーバーが備わり、シール周りの状態が良ければ水漏れしない。ハリも良い。

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