【歴史的な傑作】トヨタGRヤリス試乗 海外の評価は? 専用3ドアボディに260ps+四輪駆動 前編

公開 : 2020.11.18 10:20  更新 : 2021.03.05 18:45

ラリーシーンから誕生した、GRヤリス。ここ10年で最もエキサイティングなホットハッチなだけでなく、現在のクラス・ベストだと英国編集部は高く評価します。トヨタのイメージを変えるほどの新モデルを、一般道で試乗しました。

素晴らしくエキサイティング

text:Matt Saunders(マット・ソーンダース)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
真新しいトヨタGRヤリスが、ついに英国へも上陸した。世界的に発表されてからも、しばらくの開発期間が残っていたようだ。ほかの自動車メーカーと手を組まずにトヨタが開発を進めた、約20年ぶりの量産パフォーマンス・モデルとなる。

といっても、単独ではない。素晴らしい小さなトヨタを生み出すため、マキネンやミーク、タナック、ラトバラなど、優秀なラリードライバーに運転してもらい、多くの助言を受けているはず。

トヨタGRヤリス・サーキットパッケージ(英国仕様)
トヨタGRヤリス・サーキットパッケージ(英国仕様)

そしていよいよ、AUTOCAR英国編集部も運転する番がやってきた。英国の様々な道路環境とサーキットで特別なメカニズムを味わい、GRヤリスの本当の実力を確かめる時。はたして、欧州でも注目の高いGRヤリスは、期待通りの内容なのだろうか。

先に結論をいってしまおう。このクルマは素晴らしくエキサイティング。感嘆するほど懐が深く、刺激的なドライバーズカーだ。とてもレアでスペシャルな、小さなホットハッチが誕生した。

こんな最高のヤリスが、なぜ誕生したのか少し詳しく見ていこう。ハイパワーな四輪駆動のコンパクト・ハッチバックといえば、ラリーカーを思い浮かべるクルマ好きも多いはず。それは偶然ではない。

トヨタGRヤリスは、ここ30年の間にダウンサイジング化された、ラリーマシンのホモロゲーション・モデルに近年では最も近い。つまりプジョー205ターボ16や、MGメトロ6R4の現代版といっても、過言ではないだろう。

ホモロゲーション・モデルではない

それを誇示するかのように、フェンダーはダイナミックに膨らみ、巨大なエアインテークがにらみを効かせる。それでいて、ちゃんとヤリスらしさも残っている。

しかし実際は、ご存知のとおりラリーマシンの方が先。世界ラリー選手権(WRC)参戦のために社外で開発されたヤリスが、2015年から存在している。限定生産のロードカーが先行していた、かつてのラリー用ホモロゲーション・モデルではない。

トヨタGRヤリス・サーキットパッケージ(英国仕様)
トヨタGRヤリス・サーキットパッケージ(英国仕様)

トヨタのモータースポーツ部門、ガズー・レーシングへ投資し、トップクラスのラリーシリーズで知見を得る。そこで学び取った内容を、高性能な市販モデルへ展開する、という流れで生まれた1台がGRヤリス。その内容は今後、ほかの量産モデルへも広く影響を与えるかもしれない。

トヨタ・ブランドの市場イメージを根本的に変えていこう、という大胆な計画を進めるリーダーこそ、社長の豊田章男。決して安くつく戦略ではない。

トヨタは、BMW Z4とコンポーネントを共有したGRスープラを発表。先代のヤリスではGRMN仕様を追加し、市場の様子をうかがっていた。GRヤリスは、トヨタがどれだけ真剣な姿勢を持っているのか、世界に示す初めてのモデルとなる。責任は重い。

GRヤリスは、成り立ちから可能性に溢れている。コンパクトなボディに、ホットなエンジンと四輪駆動のドライブトレインを搭載。パワーウエイトレシオで見れば、フォルクスワーゲン・ゴルフRや、アウディS3に匹敵する。

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