【IS、極まるか?】レクサスIS 現行世代のビッグマイチェンに触れる  350 Fスポーツ/300hバージョンL 比べて評価

公開 : 2021.01.04 22:32  更新 : 2021.12.27 23:49

「F」のようなフットワーク

ストロークを抑えた硬めのサスチューン。限界性能追求というほどではなく、スポーツモデルの良識の範疇である。

感心させられるのは、硬さの中にあるしなやかさだ。

レクサスIS350 Fスポーツの前席内装(内装色:ホワイト)
レクサスIS350 Fスポーツの前席内装(内装色:ホワイト)    前田恵介

操縦特性は徹底的に弱アンダーステア。タイトターンやアクセルオンなどアンダーステアが強まる力学的傾向には則しているが、その変化幅は少ない。

パワートレインの重みを感じさせる収束感のよさやトラクションを掛けながら前輪をじわりと押し出すようにラインを拡げる感覚がいい。頭の中で描いた走りの設計図どおりに扱えるのはとても楽しい。

しかも、乗り心地の質感が高い。

車軸まわりの微小な動きも含めて揺れ返しが極めて少なく、硬いのに穏やかなのだ。

タイヤの接地面から車体骨格までが一体となって、揺れや衝撃を吸収しているような乗り心地。

段差乗り越えでは相応の突き上げはあるものの、その乗り味はスポーツ車の中でも最良クラスと言っていい。IS Fをマイルドに仕立て直したようなフットワークである。

300hバージョンL どんな感じ?

ISの基本グレード展開は標準仕様/Fスポーツ/バージョンLの3タイプ。

冒頭で述べたとおり、ラグジュアリー系上位の300hバージョンLはレクサスブランドならではの贅を楽しむモデルである。

レクサスIS300hバージョンL(ソニッククロム)
レクサスIS300hバージョンL(ソニッククロム)    前田恵介

ただし、快適性重視で選ぶタイプとは言い難い。

パワートレインは2.5L 4気筒を核にしたスプリット式ハイブリッド。

クラウンに採用されたシステムと比較するとエンジンが一世代古いタイプになるのだが、電動でドライバビリティを作り込めるハイブリッドでは動力性能面のハンデはほとんどない。

低負荷域からペダルコントロールに自然な加減速追従で扱いやすく、品のいいパワーフィールを示す。静粛性も良好であり、先進的なプレミアムセダンを実感できる。

ただ、フットワークの洗練感はイマイチ。車軸まわりの振動が目立つ。

硬い骨格に緩い関節というか、長く大きな入力ではしなやかなのだが、細かな凹凸ではサスやタイヤが個別に揺れる感じなのだ。

同型登場時に比べるとかなり改善され、殊更に挙げるほどではないのかもしれないが、350 Fスポーツの出来がよかっただけに気になった。

「買い」か?

高精度高性能な内燃機の素の味を楽しめるのは大きな魅力だが、WLTC総合モード燃費は10.7km/L。市街地モードでは7.0km/Lである。

エコ性能を考えると躊躇う気持ちもあるのだが、IS350 Fスポーツが洗練を伴う良質なスポーツセダンなのは間違いない。

自然吸気3.5L V6を積むIS350 Fスポーツのエンジンルーム。熟成を続けるレクサスのコンパクト・スポーツセダン、その評価は?
自然吸気3.5L V6を積むIS350 Fスポーツのエンジンルーム。熟成を続けるレクサスのコンパクト・スポーツセダン、その評価は?    前田恵介

ISのコンセプトの象徴であるとともにレクサスFスポーツを代表するモデル。ツーリング&スポーツ性能にこだわるユーザーならば650万円の価格は納得できるはずだ。

IS300hバージョンLは、スポーティもコンフォートも少々中途半端な印象が強いが、時代性と言う点では同クラスでもトップレベルのWLTC総合モード燃費18.0km/Lを達成。

持続的エコの時代性を備えたプレミアム&スポーティセダンである。環境とクルマ趣味の両立という点では高く評価できる。

どちらもスポーツ性を軸としたクルマ趣味が必要なモデルだが、選択の分かれ目はISらしさへののめり込み具合。

のめり込むなら現行型のラストスパートという感覚の350 Fスポーツの一択である。

記事に関わった人々

  • 執筆

    川島茂夫

    Shigeo Kawashima

    1956年生まれ。子どものころから航空機を筆頭とした乗り物や機械好き。プラモデルからエンジン模型飛行機へと進み、その延長でスロットレーシングを軸にした交友関係から自動車専門誌業界へ。寄稿していた編集部の勧めもあって大学卒業と同時に自動車評論家として自立。「機械の中に刻み込まれたメッセージの解読こそ自動車評論の醍醐味だ!」と思っている。
  • 撮影

    前田惠介

    Keisuke Maeda

    1962年生まれ。はじめて買ったクルマは、ジムニーSJ30F。自動車メーカーのカタログを撮影する会社に5年間勤務。スタジオ撮影のノウハウを会得後独立。自動車関連の撮影のほか、現在、湘南で地元密着型の写真館を営業中。今の愛車はスズキ・ジムニー(JB23)
  • 編集

    徳永徹

    Tetsu Tokunaga

    1975年生まれ。2013年にCLASSIC & SPORTS CAR日本版創刊号の製作に関わったあと、AUTOCAR JAPAN編集部に加わる。クルマ遊びは、新車購入よりも、格安中古車を手に入れ、パテ盛り、コンパウンド磨きで仕上げるのがモットー。ただし不器用。

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