【ユーザー・メリット少ない】日産ノート 燃費スペシャルにご用心 不毛な「数値」競争、いつまで続く?

公開 : 2021.01.10 05:45  更新 : 2021.10.09 23:41

不毛な燃費競争はいつまで続くのか

こうした「燃費スペシャル」といえるような存在は、「燃費重視」というユーザー側の姿勢が生み出したものだ。

「同じようなクルマであれば、少しでも燃費性能の良いものを選ぶ」というスタンスが「燃費スペシャル」誕生の理由だ。

ホンダ・Nボックス
ホンダNボックス    ホンダ

ただし、そうした動きは、実のところ沈静化の兆しが見えている。少し前まで軽自動車も燃費競争が激しかった。燃費をよくするために、タイヤの空気圧設定を驚くほど高くしたり、加速性能を犠牲にするなどの涙ぐましいメーカーのチューニングがおこなわれていた。

ところが、ここ数年はホンダのNボックスを筆頭にスーパー・ハイトワゴンがベストセラーになっている。背が高く、しかも重いスライドドアを持つ、スーパー・ハイトワゴンは燃費性能的に非常に不利となる。

そのため、Nボックスの燃費はWLTCモードで最高でも21.2km/L。軽自動車の燃費最高を競う、スズキアルトダイハツ・ミライースが、25km/L台で戦っているのに対して、大きなディス・アドバンテージとなる。

ちなみに、同じスーパー・ハイトワゴンのライバルであるスズキ・スペーシアの燃費は22.2km/L。つまり、Nボックスの燃費性能は、それほど良いわけではない。

しかし、売れ行きは不動のナンバー・ワン。言ってしまえば、軽自動車ユーザーは、今となっては、それほど燃費性能を気にしていないのだ。

さらに、新型ノートのライバルとなる、ホンダのフィットは「数字を追わない」と宣言している。実際に、燃料タンクを小さくするなどのあからさまな「燃費スペシャル」グレードを用意していない。

そうした姿勢はヤリスも同じ。ちなみにフィットのハイブリッドは最高でWLTCモード29.4km/L、ヤリスが36.0km/L。つまり、燃費スペシャルを用意した29.5km/Lの新型ノートは、ぎりぎりフィットを上回るも、ヤリスには届いていないというのが実情なのだ。

日産はそれだけ必死だということか

新型ノートの燃費性能は、燃費スペシャルで29.5km/Lで他が28.4km/Lだ。トヨタアクアは燃費スペシャルが29.8km/Lで通常グレードが27.2km/L、ホンダ・フィットは最高値が29.4km/Lで中級以上が27.2~27.4km/L。

通常グレード同士で比較すれば、ノートの燃費性能はフィットとアクアよりも良い成績となる。ただし、ヤリスは35.4~36.0km/Lなので到底届かない。ヤリスが飛びぬけているが、それら以外の3車の差は、わずか2km/L程度の差。

日産ノート X
日産ノート X

運転環境や運転の仕方でどうにかなるほど、小さなもので、正直どうでもよいのではないかと思うほど。賢明なユーザーであれば気にしないのではないだろうか。

そういう意味で、新型ノートが燃費スペシャルを用意したのは、いささか時流にあっていないといえるだろう。

もちろん、そんなことは日産だって理解しているはずだ。だが、それでもあえて燃費スペシャルを用意したのは、それだけ日産が必死だということではないだろうか。

なんといってもノートは過去3年連続のベストセラーカーだ。だが、新型のノートはeパワーというハイブリッド専用車になった。旧型では販売の6割をeパワーが占めたけれど、逆にいえば残り4割はガソリン車だった。

その4割を捨てたのだ。その捨てた分を、なんとしてでも挽回したいと考えるのは理解できる。燃費で買ってくれる人が少しでもいれば、それに対して「用意する!」そんな意気込みだったのかもしれない。

実際に、新型ノートはどれだけ売れるのか。緊急事態宣言という逆風の中で、どんな数字が出るのかに注目したい。

記事に関わった人々

  • 鈴木ケンイチ

    Kenichi Suzuki

    1966年生まれ。中学時代は自転車、学生時代はオートバイにのめり込み、アルバイトはバイク便。一般誌/音楽誌でライターになった後も、やはり乗り物好きの本性は変わらず、気づけば自動車関連の仕事が中心に。30代はサーキット走行にのめり込み、ワンメイクレースにも参戦。愛車はマツダ・ロードスター。今の趣味はロードバイクと楽器演奏(ベース)。

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