【西海岸のウッディワゴン】ビュイック・センチュリー、パッカード110、フォード・スーパーデラックス 後編

公開 : 2021.01.30 18:25

フォード自社製造のウッディワゴン

そして最後の1台がフォード。数あるウッディの中でも、フォードほど熱心にカスタムボディへ取り組んできた会社は、ほかにない。モデルTが登場した頃からピックアップトラックやツアラー、クーペなど、フォードは複数のボディをラインナップしてきた。

お気に入りのボディスタイルで、モデルT、ティンリジーを選ぶことができたわけ。1930年代から1940年代にかけての、フォードの精神だったといえる。

フォード・スーパーデラックス・ウッディワゴン(1942年)
フォード・スーパーデラックス・ウッディワゴン(1942年)

ウッドボディのステーションワゴンも、社内で生産が行われていた。ミシガン州には126ヘクタールの森と製材所も保有し、原材料から自社で賄っていた。

フォード・デラックス・ウッディワゴンが登場したのは、1941年。デザイナーのユージン・テュレンヌ・グレゴリーが描き出している。

フォードとユージンは、1939年式リンカーン・ゼファーのデザインなどで親密な関係にあった。1941年のデラックスでは、クラシカルなランニングボードがほとんど残らないワイドなボディが与えられ、モダンなルックスに仕上げられている。

ボディと一体に近いフェンダーや、グリルと並ぶヘッドライトなども特徴だろう。2ドアクーペや4ドアセダンなど、ボディスタイルも複数が用意されたが、最も高価だったのがメイプル材をフレームに用いたステーションワゴン。1125ドルという価格だった。

クレビエのウッディは、上級仕様のスーパーデラックス。クロームメッキのトリムが追加され、上質なレザーシートに木目のダッシュボードが装備されている。この年式の固有となる、フロントグリルに並ぶバーも美しい。

西海岸の浜辺で映える貴重な3台

スーパーデラックスのブレーキは、四輪ともにドラム。サスペンションもビュイックよりベーシックで、リアはリーフスプリングが付いている。ドライブトレインも最先端ではなく、フラットヘッドの3.6L V8エンジンに、3速コラムMTが組み合わされている。

第二次世界大戦がなければ、フォード製のウッディワゴンは数多く生み出されていたかもしれない。1941年に日本が真珠湾攻撃を仕掛けると、アメリカの自動車メーカーは軍需対応へシフト。フォードも、1942年1月にウッディワゴンの生産を停止してしまう。

パッカード110ステーションワゴン/フォード・スーパーデラックス・ウッディワゴン
パッカード110ステーションワゴン/フォード・スーパーデラックス・ウッディワゴン

平和が訪れるとフォードのウッディは復活するものの、1948年に生産を終了。大きな戦争を経て、1950年代が始まる頃には自動車の製造プロセスは大きく変化していた。木材を用いることに、メリットはなくなっていた。

上昇するコストとユーザー志向の変化、フラットヘッド・エンジンの寿命も重なった。衝突時など、安全上の問題もあった。

アメリカのウッディ・モデルたちは、カリフォルニアのビーチカルチャーと密接に結びついている。利便性を高めていたという点も、人気ではプラスに働いていた。

しかし維持に手間のかかるウッディは、1960年代に人気が低迷。珍しくない存在として安価に取引され、姿を消していった。

2021年の今でも、友人や恋人とロングボードを積んで西海岸の浜辺へ行くなら、美しく実用的なウッディが一番似合う。今回のビュイックやフォード、パッカードの3台ほど海岸線で映えるモデルは、ほかにはないだろう。

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