【無いなら作る】世界一小さなタイヤメーカーが誕生 ドリフトが背景

公開 : 2021.02.06 05:45  更新 : 2021.10.13 12:14

「シバタイヤ」というブランドをご存知でしょうか。必要なタイヤをみずから作ってしまった人物を取材しました。

ドリフトで大量消費 ならば作ろう

text:Kouichi Kobuna(小鮒康一)
editor:Taro Ueno(上野太朗)

軽自動車からスーパーカーまで、車種を問わずクルマと路面のコンタクトを担っているタイヤ。ただ一口にタイヤといっても、装着する車両やクルマの使い方によってベストなタイヤは異なってくるため、自分好みのタイヤを見つけるのはなかなか難しい作業といえる。

そんな自分が必要とするタイヤを、みずから作り上げてしまった人物がいる。

シバタイヤ
シバタイヤ

それが柴田自動車株式会社の代表、柴田達寛氏だ。コアなユーザーにとってはR31型スカイライン専門店の「R31 HOUSE」の代表といったほうがピンとくるだろう。

そんな柴田氏が立ち上げた「シバタイヤ」ブランドは、今年(2021年)の1月17日に設立された出来立てほやほやの新タイヤメーカーであり、ラインナップされるタイヤは自身が欲しいと思うサイズと、カッコいいと思ったパターンを具現化したもの。

同社は3年前からドリフト競技の「D1グランプリ」参戦しているが、ご存知のとおりドリフト走行は後輪を滑らせるものであり、タイヤの消耗は半端ではない。シーズンを通して参戦するとなると、練習時のものも含め年間500本近いタイヤを消費する計算になるそうだ。

となるとタイヤ代もバカにならない額になってしまうため、それならば「自社でタイヤを作ってしまおう」という考えに至ったという。

実はR31 HOUSEは10年前にラジコンメーカーも立ち上げており、ラジコン用のタイヤも制作していた経験があってのアイデアだったのである。

中国の新興メーカーにアポなし突撃

自分が欲しいタイヤを作るといっても、さすがにゼロから工場を立ち上げるのは現実的ではないということで、自身が理想とするタイヤを作ってくれるタイヤメーカーを探すところからプロジェクトはスタート。

そこで柴田氏が向かったのは今から1年半前に上海で開催された「タイヤ・エキスポ2019」だった。

後輪を滑らせる「ドリフト走行」
後輪を滑らせる「ドリフト走行」

大小あわせて200社ほどのタイヤメーカーが集まるこの会場で、展示されるタイヤを1つ1つチェックしていくと、触れた瞬間に「これだ」と感じるものを発見する。

それこそが現在のシバタイヤの製造元である「レイダン(RYDANZ)」だったのだ。

レイダン・タイヤは2011年に中国で創業したばかりの新興メーカーであったが、そのクオリティは間違いないと踏んだ柴田氏は、アポなしでタイヤの製造の交渉をし、見事に交渉成立を勝ち取る。

そして翌月には現地の工場を視察し、2か月後にはレイダンタイヤの社長が柴田自動車を訪問し、無事にタイヤを生産することが決定するというスピード感だったそうだ。

そこからはおよそ1年半に渡ってドリフト競技に参戦しながらタイヤの開発に費やし、満を持して登場したのが、このシバタイヤということになる。

ただ、競技用のタイヤはその力を最大限に発揮できる使用期限が短く、常にフレッシュなタイヤを供給するのは難しいという判断から、D1用のタイヤは中国最大手のタイヤメーカーであるサイルンタイヤとスポンサー契約をし、シバタイヤはストリートラジアルに特化することになっている。

記事に関わった人々

  • 小鮒康一

    Koichi Kobuna

    1979年生まれ。幼少のころに再放送されていた「西部警察」によってクルマに目覚めるも、学生時代はクルマと無縁の生活を送る。免許取得後にその想いが再燃し、気づけば旧車からEV、軽自動車まで幅広い車種を所有することに。どちらかというとヘンテコなクルマを愛し、最近では格安車を拾ってきてはそれなりに仕上げることに歓びを見出した、尿酸値高い系男子。

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