【究極のXKになり得た】ベルトーネ・ジャガーXK150 現存1台 魅了するクーペ 後編

公開 : 2021.02.21 17:45

魅了されるほど妖艶なボディに包まれた、ジャガーXK150「XKE」。イタリアのカロッツェリア、ベルトーネが生み出した1957年の貴重な1台をご紹介しましょう。

ベントレーのデザイナーも心を奪われた

text:Mick Walsh(ミック・ウォルシュ)
photo:Olgun Kordal(オルガン・コーダル)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
カリフォルニアで過ごす間に、ベルトーネ・ジャガーXK150のステアリングホイールはモト・リタ製に変えられていた。ドライビングポジションを良くするため。だがドノバンは、オリジナルのジャガーXK用を加工するというアイデアを実行した。

より本物らしく見え、運転姿勢も取りやすい。若干直径が小さいが、ステアリングの反応はシャープになる。

ベルトーネ・ジャガーXK150(XKE/1957年)
ベルトーネ・ジャガーXK150(XKE/1957年)

黒い盤面のスミス製メーターとスイッチ類が並ぶダッシュボードは、ベルトーネのデザイン。当時のジャガー製ダッシュボードより、はるかにモダンな仕上がりだ。

古いノブ類は、新しいトグルスイッチに交換してある。当時の写真では、センターコンソールの詳細がわからなった。ドノバンは、後に手が加えられた部分かもしれないと考えている。「大変で愛すべき作業でした。正しく仕上げようという決意が実りました」

7年間のレストアを経て、ベルトーネ・ジャガーXK150のお披露目準備が整った。ボディをデザインしたスカリオーネも、英国サロン・プリヴェ・コンクール・デレガンスの反応には喜んだに違いない。

ベントレーのデザイン・ディレクター、シュテファン・ジーラフも、サロン・プリヴェで目にしたベルトーネ・ジャガーXK150に心を奪われた。「このなかで最も美しいクルマでしょうね」。と印象を述べている。

ドノバンは、北米で開かれるアメリア・コンクール・デレガンスやペブルビーチなどへの出展を計画している。「ザガートやギア・スーパーソノックなど、コーチビルド・ボディのXKとともに展示される様子は、壮観なものになるでしょう」

ジウジアーロが関わった可能性も

「イタリアでは、スカリオーネのトリビュート・イベントが開かれる計画もあるようです」。偉業を称える1台として、うってつけだ。

記録では、ベルトーネ・ジャガーXK150は3台製造されたらしいが、2台目の写真は見つかっていない。もしかすると、1957年のプロトタイプが1台目。インゲニョーリのためにアップデートしたのが、2台目なのだろうか。

ベルトーネ・ジャガーXK150(XKE/1957年)
ベルトーネ・ジャガーXK150(XKE/1957年)

台数は別として、ジャガーのスタイリングを現代化させる作業は、スカリオーネの手にかかっていた。ジョルジェット・ジウジアーロも、後輩としてベルトーネへ入社していた。ジャガーのリ・デザインを手伝った可能性はある。

スーツのように、ボディを好みに応じて微調整する作業は、コーチビルドの世界では珍しくなかった。アストン マーティンDB4 GTベルトーネ・ジェットやフェラーリ250 GTのように、大胆なサイド・エアベントは当時の流行スタイルだった。

もう1台のベルトーネ・ジャガーXK150を注文したのは、英国のアンソニー・ストリックランド・ハバード。プレイボーイで、事業で成功した財産を相続する立場にあった。

特別なボディのXK150は、英国ギルフォードの街でジャガー・ディーラーを営んでいた、ジョン・クームズを介して注文された。ハバードの要求に応えるため、クームズはベルトーネへ連絡。XK150クーペの、右ハンドル版の制作を相談する。

メタリック・レッドのボディにクリーム色の内装で仕上げられ、フロント・ホイールアーチのプレスラインなどに、ミラノのベルトーネ・ジャガーXK150との違いが見られれる。リアのXKEのエンブレムに沿って、トリムも追加された。

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