【試作車を販売】ジェンセンC-V8コンバーチブル 雨漏りに剛性不足 奇抜な姿 後編

公開 : 2021.02.28 17:45

噂ほど運転しにくくない

美しさを取り戻した、ジェンセンC-V8コンバーチブル。230mmほど全長が長いはずだが、実際に目の辺りにすると違和感はなく、標準のC-V8クーペと並べない限りわからないだろう。

曲線が交差し、水ぶくれしたような面構成で、ニールのデザインは視覚的にうるさい。しかし、全体的にはバランスの取れたプロポーションだと思う。コンバーチブルとしても、きれいに仕上がっている。

ジェンセンC-V8コンバーチブル(1965年)
ジェンセンC-V8コンバーチブル(1965年)

最初のオーナーのキャリントンは、Mk-IIIスタイルのウッドパネルが貼られたダッシュボードに交換したと考えられている。フードの雨漏りが治っているのかは不明だが、現在のオーナー、サウソールは全方向に優れた視界を評価する。

死角の少なさは、個性的なリアガラス形状をしたクーペのC-V8では得られない。実用性の面でもプラスだ。再塗装されたといっても、C-V8の保存状態は良かった。長年大切にされてきたことが、伺い知れる佇まいだ。

構造的な不具合をジェンセンがどう直したのかは不明だが、C-V8コンバーチブルは噂ほど運転しにくくない。現代の基準でいっても、4シーター・コンバーチブルとして速く文明化されている。

加速はベルベット生地のように上品で滑らか。コラム3速ATは、いつ変速をしたのか分からない。V8エンジンはトルクが太く、3500rpm以上回す必要はない。費やされた努力の評価や、ハンサムとはいい難いデザインとは一致しない、スピード感がある。

高速で走らせれば、流れる空気と気だるいV8エンジンのノイズがドライバーを包む。一方で、ハンドリングはビンテージカーらしい。

ジェンセン兄弟のアイデアは正しかった

ステアリングの応答性は期待以上。しかし低速域ではかなり重く、ジェンセンのオーナーを逃すきっかけになったまま。大きな18インチ・ホイールも一因だろう。

その反面、路面の凹凸を越えても安心感が乱れることはない。ライン取りにも不安感はない。ステアリングは、速度が高まるとともに軽くなっていく。

ジェンセンC-V8コンバーチブル(1965年)
ジェンセンC-V8コンバーチブル(1965年)

前後重量配分に優れたシャシーでボディロールは少なく、軽いアンダーステアを保ったままコーナーをスムーズに抜けられる。トルクの太いV8エンジンが、脱出を勢いづけてくれる。

ブレーキペダルのストロークは長いが、ディスクブレーキは頼りがいがある。クラシックな構成のサスペンションも、期待以上に静かで乗り心地は穏やか。時折シャシーがきしみ、ボディがカタカタと音を立てるが。

雨が多く緑豊かな島国は、オープントップを楽しむのに素晴らしい環境だといえる。適度に暖かく晴れた貴重な1日を、最大限に楽しもうという気持ちにさせてくれる。

たった1台、プロトタイプとして生まれたジェンセンC-V8コンバーチブル。速いだけでなく、ドライバーを社交的にもしてくれる。

C-V8コンバーチブルの10年後、実用性では若干劣るインターセプター・コンバーチブルが誕生した。登場のタイミングはブランドにとって少々遅かったが、確実な成功を残した。ジェンセン兄弟のアイデアが正しいと、後に証明したのだった。

ジェンセンC-V8コンバーチブル(1965年)のスペック

価格:3491ポンド(新車時)/25万ポンド(3500万円/現在)
生産台数:1台
全長:4915mm
全幅:1702mm
全高:1397mm
最高速度:209km/h
0-97km/h加速:6.7秒
燃費:4.2-5.7km/L
CO2排出量:−
乾燥重量:1511kg
パワートレイン:V型8気筒6276cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:334ps/4600rpm
最大トルク:58.6kg-m/2800rpm
ギアボックス:3速オートマティック

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