「離れるのが心配でならない」 シムカ・アロンド・プラン・シエル(2) とある女性が愛して34年

公開 : 2025.12.20 17:50

フランス最大の民間自動車メーカーだったシムカ フィアットの技術を利用したアロンド 写真以上に美しい実物 変速で古い4気筒と実感する細いトルク UK編集部が希少なクーペをご紹介

とある英国人女性に34年所有されるシムカ

今回のシムカ・アロンド・プラン・シエルは、ジュリー・ランバート氏が34年間所有するもの。ペブルビーチ・コンクール・デレガンスでは、見事なコンディションに多くの参加者が魅了されていた。筆者も、その1人だ。

グレートブリテン島南部、ハンプシャー州の中古車店でポツリと売られていたという。「クルマ好きの兄と一緒に、見に行きました。ガンメタリックに塗られていましたが、オリジナルはブラック。再塗装したいと、思っていたんです」。彼女が話す。

シムカ・アロンド・プラン・シエル(1957〜1962年/欧州仕様)
シムカ・アロンド・プラン・シエル(1957〜1962年/欧州仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

4年前に、2度目のレストアを受けている。「ボディはトライアンフを得意とする、ハンプシャーのベルズ・オート・サービス社へお願いしました。それ以外は、兄が務めるガレージで仕上げてもらっています」

マフラーは、近々交換予定。ボンネットのクロームメッキ・トリムも、交換するつもりだとか。「シムカの純正ラジオも、取り寄せています。ワイヤーホイールも組みたいんですが、再メッキが必要なんですよ」。と続ける。

写真以上に実物は美しい

「状態はさほど酷くありませんでした。サイドシルは駄目で、フロントガラス周辺から雨漏りしていましたが。ラバーシールが入手困難で、リア側も交換が必要でしたね」

「1957年11月に作られたカーペットも、入手してあります。エンジンはリビルドし、高速道路へ対応するように、トップギアのレシオを上げてもらいました。信頼性は高いといえますよ。1957年と1958年式が、1番美しいと思います」。と微笑む。

シムカ・アロンド・プラン・シエル(1957〜1962年/欧州仕様)
シムカ・アロンド・プラン・シエル(1957〜1962年/欧州仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

「1959年にフロントグリルが変わり、バンパーは大きくなりました。フロントガラスの形も変わって、バッジはアロンドからシムカに置き換わっています」

写真でも美しいアロンド・プラン・シエルだが、実物はもっと美しい。ファセル・ヴェガとフォード・サンダーバードをミックスしたような、都会的な雰囲気を漂わせる。1950年代後半のシャンゼリゼ通りで、映えたに違いない。

ミッドセンチュリー的なインテリア

全長は4166mmと小柄だが、小さな印象はない。長いテールに、大きなトランクリッドが切られている。ドーム状のルーフ下は、ほぼ全面がガラス。プラン・シエルはフランス語で「満天の星空」を意味するが、納得だ。

フロントガラスはサイドに回り込み、ドア開口部の前端に膝をぶつけがち。ガラスには緩衝材がなく、優しく閉めないとガラスは割れるだろう。シートは肉厚で、リクライニングできる背もたれは、当時では珍しい装備だった。

シムカ・アロンド・プラン・シエル(1957〜1962年/欧州仕様)
シムカ・アロンド・プラン・シエル(1957〜1962年/欧州仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

ダッシュボードは、ガラスへシンクロするようにカーブを描き、丸いスピードメーターが正面に1枚あるだけ。文字盤のフォントが面白い。その内側へ、燃料計や水温計が備わる。シンプルなデザインだが、貧素ではない。

ステアリングホイールには、ホーンリング。クロームメッキのスポークと、内装と同じレッドのリムが、ミッドセンチュリー的といえる。

記事に関わった人々

  • マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

シムカ・アロンド・プラン・シエルの前後関係

前後関係をもっとみる

関連テーマ

おすすめ記事

 

人気記事