【完全刷新/改良?】クルマの肝は「土台」 日産ノートにみる重要性

公開 : 2021.02.27 05:45  更新 : 2021.10.22 10:12

プラットフォームの刷新なくとも……

ノートが進化した一方で、プラットフォームを刷新しなくても、走行安定性と乗り心地が向上する場合もある。

例えば現行プリウスで初めて採用された「GA-Cプラットフォーム」は、その後、C-HRや3ナンバーサイズの現行カローラに採用されて、走行安定性や乗り心地を向上させていった。

レクサスIS
レクサスIS

日産のコンパクトカーに採用される「Vプラットフォーム」も同様だ。

最初にマーチに採用された時は粗さが気になったが、この後、先代ノート、現行キックスに採用されながら走行安定性と乗り心地を高めていった。

このあたりを開発者に尋ねると「いまは昔に比べてプラットフォームの解析が進み、弱点も把握しやすい。何をすれば良くなるのか正確にわかるから、時間が経過するほど熟成度も高まる」という。

以前に比べてシミュレーション技術なども進化したから、市販された後の改善による進化も大きいわけだ。

とくに現行マーチとキックス。後者は高重心でボディも重いから走りでは不利な要素が多いが、乗り比べると大幅に進歩している。

レクサスISは、2020年に実施されたマイナーチェンジで、乗り心地、走行安定性、操舵に対する車両の反応などをフルモデルチェンジかと思えるほどに向上させた。

マイナーチェンジだからプラットフォームは従来と共通だが、構造用接着剤の採用、スポット溶接打点の追加、各部の補強などをおこなってボディを強化した。

そこにショックアブソーバーやスプリングの設定変更、空力特性の見直しなども加わり、乗り心地と走行安定性を格段に向上させている。

以前は定期的にプラットフォームを刷新して走行安定性や乗り心地を進化させる必要があったが、今は従来型の改善で可能な領域が広がっている。

安全性能の向上には刷新が必要

レクサスISの進化を見ると、プラットフォームを新開発したり、フルモデルチェンジをおこなう周期は大幅に伸ばせるように思えてくる。

その一方で、プラットフォームを刷新しないと困難な進化もある。例えば衝突安全性能を大幅に改善するには、プラットフォームも刷新しなければならない。軽量化も同様で、大幅に軽くするには新しいプラットフォームの開発が必要だ。

ホンダNワン(赤が現行型、白が旧型)
ホンダNワン(赤が現行型、白が旧型)

ホンダNワゴンでは、フルモデルチェンジをおこなうことで、衝突被害軽減ブレーキや運転支援機能を大きく進化させた。

Nボックスが現行型になって安全性能などを高めたとき、NワゴンやNワンでもマイナーチェンジによって同様の改良を実施できないか開発者に尋ねたが、「大幅な変更が必要だから、プラットフォームをNボックスと同様に進化させるフルモデルチェンジを実施しないと難しい」と返答された。

ちなみに2020年に発表された新型Nワンは、フルモデルチェンジをおこなったのに、ボディパネルの基本部分は先代型から流用した。

「この程度の変更ならマイナーチェンジで十分」という見方も成り立ったが、安全装備や環境性能を向上させるためにフルモデルチェンジを実施した。

いまは環境性能や自動運転技術の開発コストが高まり、車両の開発費用が影響を受けて、プラットフォームを刷新する周期も長くなっている。

マイナーチェンジでもどこまで改善できるかが、従来以上に大切になってきた。

記事に関わった人々

  • 渡辺陽一郎

    Yoichiro Watanabe

    1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆様にケガをさせない、損をさせないこと」を重視して、ユーザーの立場から、問題提起のある執筆を心掛けている。買い得グレードを見極める執筆も多く、吉野屋などに入った時も、どのセットメニューが割安か、無意識に計算してしまう。

関連テーマ

おすすめ記事

 

レクサスの人気画像