【労働者のFFアルファ】アルファ・ロメオ・アルファスッド 希少になった大衆車 後編

公開 : 2021.04.25 17:45

驚くほど現代的で有能な3台

非常に状態の良いブラゴリの白いtiは、1978年5月から1980年1月という短い期間に作られたシリーズ2。初期のスプリント・クーペと同じ76psのエンジンを載せている。

ブラゴリは2016年に、中古車売買のサイトで見つけたという。「1991年からガレージに保管されていたようです。わたしが4番目のオーナー。錆びていませんでしたが、オリジナル状態に近く完璧に仕上げたかったので、地金まで戻して再塗装してあります」

アルファ・ロメオ・アルファスッド tiクーペ・シリーズ2(1978年)
アルファ・ロメオ・アルファスッド tiクーペ・シリーズ2(1978年)

若干28歳のブラゴリは、イタリア車とともに育った。走行距離の短いオリジナルのフィアット500と、ストラーダ・アバルト130TCが、今も家のガレージに並んでいるという。

3台のアルファスッドで共通しているのが、驚くほど現代的で有能だということ。発表時は人々の期待に応えるような、新しいアルファ・ロメオの一章が始まったと感じたことだろう。

現代規準でいえば、低速域でステアリングホイールが重いと感じるかもしれないが、苦労するほどでもない。今のパワーステアリングに慣れてしまっただけだと思う。

走り始めると、アンダーステアもボディロールも、タイヤのスキール音も生じない。タイヤが路面に張り付いているかのような感覚を覚える。グリップの余力も高く、道をひたひたと走り続ける。

活気があり、自信も抱かせてくれる。アルファスッドの運転は、一種のリラクゼーションのようですらある。ステアリングホイールは逆らうことなく、ブレーキは強力に効く。

一番活発なツインキャブレターのクーペ

この3台で一番活発なのは、ツインキャブレターの1490ccエンジンを積む、緑のスプリント・ベローチェ・クーペ。高回転域まで引っ張ってシフトアップしたくなる、太いトルクもある。

一方でクーペはステアリングホイールが膝に近く、少し窮屈に感じる。ペダル間隔が近く、運転には集中力も欠かせないようだ。「クーペは正直運転しにくいです。ベルリーナの方は、自宅のように過ごしやすいですね」。ルゲリが話す。

アルファ・ロメオ・アルファスッド・スプリント・ベローチェ・クーペ(1980年)
アルファ・ロメオ・アルファスッド・スプリント・ベローチェ・クーペ(1980年)

3台ともに元気は良い。アイドリングは若干乱れるが、6000rpm以上まで軽快に回る。エンジンノイズの質感はいいものの、あまり気持ちを高ぶらせない。tiのペダルも、若干オフセットしている。

筆者はあまりドライビングポジションにうるさくないが、確かにtiの方が居心地が良い。そのおかげで、現在の取引価格にも差がある。

すべての操作系をステアリングコラムに集約する、アルファ・ロメオ流の設計が筆者好み。全方向に優れた視界は、技術者のフルシュカがデザイナーのジウジアーロに求めた要求の1つだった。

機敏なコーナリング性能を備えていながら、快適性も犠牲になっていない。よほどの隆起でない限り、多少の穴でもしなやかにサスペンションが受け流してくれる。

シリーズ2のtiは、ドライでザラついた排気音が心地良い。滑らかにゲート間を変速できる5速MTを操れば、ほどほどにパワフルにも感じられる。しっかりしたシンクロメッシュで、鋭いアクセルレスポンスにも対応できている。

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