【ターボレスのV8+4シーター】フェラーリ・モンディアル 英国版中古車ガイド 手頃な跳ね馬

公開 : 2021.04.27 08:25  更新 : 2021.08.05 08:06

スピードは最新のマツダ・ロードスター並みでも、ターボレスのフェラーリ製V8ユニットを積んだ4シーターのモンディアル。中古車としての魅力を、英国編集部が解説します。

リアシートの付いたクラシック・フェラーリ

text:Felix Page(フェリックス・ペイジ)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
先に触れておこう。フェラーリ・モンディアルの0-100km/h加速時間は、最新のフォードフィエスタSTやマツダロードスターと大差ない。車重が1t近く多いポルシェカイエン・ターボS Eハイブリッドなら、簡単に追い越せる。

最もパワフルな仕様でも、最高出力は300ps。一般的な手に届きやすいモンディアルなら、218psしか得られない。

フェラーリ・モンディアル(英国仕様)
フェラーリ・モンディアル(英国仕様)

1980年代のクラシック・フェラーリではある。しかし同世代の288 GTOのようなホモロゲーション・モデルでもないし、手懐けるのが難しいアナログな宇宙船、テスタロッサとも違う。

モンディアルという名前は、イタリア語のアクセントならかなりエキゾチックに聞こえる。ところが世界水準の安全性や環境規制に準拠したモデルとして誕生し、バーで自慢できるような激しさは備わっていない。

かといって、見過ごさないで欲しい。モンディアルの後ろを観察すれば、小さなリアシートがあることがわかる。同時期のフェラーリより、使い勝手では優れている。

英国では3万ポンド(450万円)ほど出せば、状態の悪くない例が見つかる。入手しやすい跳ね馬なのだ。

何より忘れたくない事実は、ミドシップされているのがマラネロで設計されたフラットプレーン・クランクの自然吸気V8エンジンだということ。サウンドは、知らない人が聞けばハイパフォーマンス・フェラーリだと納得させるのに充分以上だ。

特にトゥビやラリーニのマフラーなら、間違いなく効果的。落ち着いた印象のスタイリングとは、少し不釣り合いかもしれないけれど。

ハンドリングはフェラーリの期待通り

サスペンション・ブッシュやボールジョイントが新鮮な状態なら、活き活きとカーブの続く道を走ってくれる。ハンドリングはフェラーリの期待通り。ミドシップだから、重心位置や前後の重量配分も申し分ない。

4シーターのモンディアルが登場したのは1980年。当初モンディアル8として発表され、V8エンジンは3.0L。比較的安価に手に入るが、より高性能を望むなら4バルブのクアトロバルボーレがいい。1982年に登場している。

フェラーリ・モンディアル(英国仕様)
フェラーリ・モンディアル(英国仕様)

1985年には排気量が3.2Lに拡大された。とっておきを選びたいなら、1989年に追加されたモンディアルT。1993年のモデル終了まで生産されている。

モンディアルの最終形態として、Tでは排気量が3.4Lへアップ。0-97km/h加速5.2秒と、動的性能も目に見えて向上している。

1983年にはコンバーチブルも追加されたが、ソフトトップの収納構造がリアシートの空間を狭めている。家族全員で、1台の跳ね馬に乗るのは難しいかもしれない。

そもそもフェラーリ・ファンがモンディアルを評価しなかった理由の1つは、冴えないパフォーマンスにあった。また6000台以上という堅調な販売も特別感を薄め、マニアからは敬遠された。

しかし筆者は、民主化されたフェラーリでも気にする必要はないと思う。250 GTOに520万ポンド(7億8000万円)の値段がつく時代。古いフェラーリを手頃に入手できるのなら、歓迎すべきことだ。

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