【Gクラスに折り畳みルーフ】ユーリエ・イントルーダー スポーツクーペxオフローダー 前編

公開 : 2021.06.06 07:05

ベース車両はメルセデス・ベンツG 320

そんなフランスのカロッツェリアには、野心があった。1992年にはイタリア・トリノにデザインスタジオを開設。カーデザイナーのマルク・デュシャンを雇い、最先端のコンセプトカーへ次々に取り組んだ。

ベルトーネ社に在籍していたデュシャンは、シトロエンGSカマルグのデザインに関与。初期のスケッチからわずか5週間で展示モデルへ仕上げるという、仕事の早さを身に着けていた。

ユーリエ・イントルーダー・コンセプト(1996年)
ユーリエ・イントルーダー・コンセプト(1996年)

ユーリエ社で最初に生み出したのは、ラフィカ。リトラクタブル・ヘッドライトと開閉可能なワンピース・ハードトップを備える、艷やかなボディのクーペだ。このプロジェクトをたった2か月でまとめ上げ、1992年のパリで発表した。

1993年には、ラフィカIIを完成。ユーリエ社がフォールディング・ハードトップの草分け的存在になるきっかけとなる、2ピースの分割式ルーフを備えていた。イントルーダーへの伏線が引かれた。

ラフィカで得た経験は、1995年にオフローダーとスポーツカーの融合を目指したモデルへ展開。ユーリエ社としてコンセプトカーを生み出すなら、ベストな素材がいい。選ばれたベース車両は、メルセデス・ベンツG 320だった。

デザインがスタートしたのは1995年半ば。メルセデス・ベンツが工場で組み上げたボディはシャシーから降ろされ、新しいボディの構想が練られた。

デュシャンはアイデアスケッチを重ね、4分の1のスケールモデルは1996年2月に完成。原寸大のレンダリング、デザインスケッチが描き出された。5月までには全体の最終デザインが決まった。

下半分を隠せば小柄なスポーツカー

ユーリエの職人たちは、モダンなコンピューターの力は借りず、従来的な手技でボディを製作。イタリア・ピエモンテのワークショップで、ボンネットを除くパネルを鋼板から成形した。バンパーは、軽量で強固なカーボンファイバー製だ。

インテリアも短時間でデザインを完了。裸のメルセデス・ベンツ製シャシーに、直接組み上げられたという。

ユーリエ・イントルーダー・コンセプト(1996年)
ユーリエ・イントルーダー・コンセプト(1996年)

G 320のフロアパンと駆動系統には、ほとんど手は加えられなかった。M104型と呼ばれる3199ccの直列6気筒エンジンと、4速AT、3基のロック機能付きデフはそのまま。圧倒的なオフロード性能は維持されている。

新しいボディで車重が変わったため、サスペンションは再調整。低く傾斜したボンネットのラインに合わせて、ラジエターの位置は見直されている。

17インチのホイールは、ドーナツ状の円盤を内側に追加。視覚的に、小さく見えることを狙ったようだ。タイヤサイズは285/60と太い。

Gクラスのシャシーに載るボディは、かなり大胆。下半分を手で隠してタイヤより上の部分だけを見れば、小柄なスポーツカーだと勘違いしてしまいそう。

サイドシルやフェンダーにはクロスオーバーらしい色違いのカバーが付き、ボディを薄く、車高を高く見せる。トランクリッドやライトなど、リアまわりのデザインはまとまりが良く、筆者はイントルーダーのベストアングルだと思う。

AMG GTに通じる雰囲気も、なくはない。一方でフロント周りは少し不格好。悪くいえば、膨れたピーナッツのようにも見える。

この続きは後編にて。

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