メルセデス・ベンツG 580 EQテクノロジー(1) ラダーフレームに新技術満載 電動ハードを概説

公開 : 2025.10.17 19:05

Gクラスにもやってきた電動化 バッテリーは116kWh モーター4基で587ps AMG V8を模した人工音 ドロ付きブーツを躊躇する高級内装 車重を感じる乗り心地や操舵感 UK編集部が試乗

Gクラスにもやってきた電動化のうねり

電動化のうねりは伝統のゲレンデ、Gクラスにもやってきた。メルセデス・ベンツはバッテリーEVの投入へ積極的で、社内合意はスムーズだっただろうと推測する。だが、変革にはリスクも伴う。

これまで通り、エンジンで走るGクラスも提供されており、EV版が占める割合はまだ15%に留まるらしい。同社のある幹部は、失敗作だと非難しているとか。それでも、ラダーフレーム構造の本格的なオフローダーとして、印象的な仕上がりにはある。

メルセデス・ベンツG 580 ウィズEQテクノロジー AMGライン・プレミアムプラス(英国仕様)
メルセデス・ベンツG 580 ウィズEQテクノロジー AMGライン・プレミアムプラス(英国仕様)

ライバルへ先んじて、G 580 ウィズEQテクノロジーが電動化のパイオニアとなったことは事実。レンジローバージープも、追従する動きを見せている。オフローダーの将来を牽引する、その実力とは?

駆動用バッテリーは116kWh モーターは4基

スタイリングは、エンジン版のGクラスとほぼ同じ。しかし、ブルーのトリムで飾られ、ボンネットが僅かに高く、フロントピラーへ樹脂製カバーが付き、専用のルーフスポイラーが載っている。リアのホイールアーチ部分には、エアアウトレットも備わる。

鋼板製ラダーフレームはオーストリア・グラーツ工場で製造され、その内側へ容量116kWhの駆動用バッテリーが収まる。厚さ30mmのカーボン製カバーで保護されるバッテリーの筐体は、省かれたブレース材にかわってシャシー剛性を担保する。

メルセデス・ベンツG 580 ウィズEQテクノロジー AMGライン・プレミアムプラス(英国仕様)
メルセデス・ベンツG 580 ウィズEQテクノロジー AMGライン・プレミアムプラス(英国仕様)

車重は3209kgに達し、AUTOCARが試乗した量産車では最重量級。歴史的な小さな橋は、保全のために渡らない方が賢明だろう。前後の重量配分は、48:52とリア寄りだ。

駆動用モーターはタイヤ毎に1基づつ備わり、計4基。ディファレンシャルやプロペラシャフトを不要としつつ、出色の動力性能を実現している。個別にモーターを回転させて、360度ターンも可能。英国仕様の場合、20インチ・ホイールが標準になる。

ドロ付きブーツを躊躇する高級な車内

現行のGクラスは、2018年にモデルチェンジへ近い改良を受けている。だが、伝統となるような特徴は巧みに残された。フェンダー上のウインカーも、その1つ。プッシュボタン式のドアハンドルと、ガシンと閉まるドアも、Gクラスらしさを演出する。

本格的なオフローダーらしく、乗降性は良くない。よじ登るように身体を持ち上げ、背筋を伸ばした運転姿勢へ落ち着けば、アウディQ7の乗員すら見下ろすことになる。直立したフロントガラス越しに、長方形に切り取られた景色が広がる。

メルセデス・ベンツG 580 ウィズEQテクノロジー AMGライン・プレミアムプラス(英国仕様)
メルセデス・ベンツG 580 ウィズEQテクノロジー AMGライン・プレミアムプラス(英国仕様)

全長4825mm、全幅1931mm、全高1969mmという大きさを考えると、車内空間は正直狭い。特に足元の余裕は限定的。小ぶりなサイドミラーが死角を抑えているものの、充電ケーブルをしまうケースがリアゲートに備わり、後方視界は制限される。

身体を包み込むシートは、調整域が広く、数時間座っても疲れ知らず。内装は高級感に溢れ、ドロの付いたブーツで乗るのを躊躇するほど。ただし、ダッシュボードが走行中に振動音を発するなど、製造品質にはムラもある。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マレー・スカリオン

    Murray Scullion

    役職:デジタル編集者
    10年以上ジャーナリストとして活動し、雑誌、新聞、ウェブサイトに寄稿してきた。現在はオンライン版AUTOCARの編集者を務めている。オースチンやフェラーリなど、1万円から1億円まで多数のクルマをレビューしてきた。F1のスター選手へのインタビュー経験もある。これまで運転した中で最高のクルマは、学生時代に買った初代マツダMX-5(ロードスター)。巨大なジャガーXJ220も大好き。
  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    役職:編集委員
    新型車を世界で最初に試乗するジャーナリストの1人。AUTOCARの主要な特集記事のライターであり、YouTubeチャンネルのメインパーソナリティでもある。1997年よりクルマに関する執筆や講演活動を行っており、自動車専門メディアの編集者を経て2005年にAUTOCARに移籍。あらゆる時代のクルマやエンジニアリングに関心を持ち、レーシングライセンスと、故障したクラシックカーやバイクをいくつか所有している。これまで運転した中で最高のクルマは、2009年式のフォード・フィエスタ・ゼテックS。
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

メルセデス・ベンツG 580 EQテクノロジーの前後関係

前後関係をもっとみる

関連テーマ

おすすめ記事

 

人気記事