合理的じゃないのがゲレンデ? メルセデス・ベンツG 580 EQテクノロジー(2) 「正常な進化形」

公開 : 2025.10.17 19:10

Gクラスにもやってきた電動化 バッテリーは116kWh モーター4基で587ps AMG V8を模した人工音 ドロ付きブーツを躊躇する高級内装 車重を感じる乗り心地や操舵感 UK編集部が試乗

4モーターで587ps AMG V8を模した人工音

メルセデス・ベンツG 580 ウィズEQテクノロジーの最高出力は、4モーターで587ps。V8ツインターボエンジンのAMG G 63へ迫るパワーを秘める。タイヤ毎に147psの駆動用モーターが組まれ、リダクションギアには悪路用のローレシオも備わる。

0-100km/h加速は4.7秒と、3t超えのオフローダーとしては俊足。最高速度は180km/hに留まるが。アクセルペダルの調律は入念で、ドライブモードによって反応は変化。ブレーキも感触が一定で、滑らかに効く。回生ブレーキはパドルで調整できる。

メルセデス・ベンツG 580 ウィズEQテクノロジー AMGライン・プレミアムプラス(英国仕様)
メルセデス・ベンツG 580 ウィズEQテクノロジー AMGライン・プレミアムプラス(英国仕様)

EVらしく、発進時のトルクは極太。4基合計の最大トルクは、117.3kg-mもある。

EQテクノロジーならではといえるのが、AMGのV8エンジンを模したサウンドを人工的に再生する、「Gロア」と呼ばれる機能。バッテリーEVだと知らない人が外から聞いたら、エンジンで走るGクラスだと勘違いするかもしれない。飽きたらオフにもできる。

車重を感じる乗り心地や操舵感

ラダーフレームに四角いボディが架装され、サスペンションはエアスプリングではなくコイル。車重は3209kgあり、乗員も含めた最大積載量は415kgに設定される。恐らく、家族4人とキャンプ道具を詰めば、達してしまうはず。

走り出すと、乗り心地や操舵感で車重を感じる。ステアリングホイールを回してから、ボディが反応するまでには明確なラグがある。それでも、3t超えとまでは思わせない。

メルセデス・ベンツG 580 ウィズEQテクノロジー AMGライン・プレミアムプラス(英国仕様)
メルセデス・ベンツG 580 ウィズEQテクノロジー AMGライン・プレミアムプラス(英国仕様)

アダプティブダンパーが組まれるが、速度域が低い市街地では、凹凸を処理しきれずボディが揺れる。とはいえ、ピックアップトラックより上質ではある。高速域での風切り音が想像より大きいのは、パワートレインが静かに仕事をするからだろう。

電費は、今回の試乗の平均で3.2km/kWh程度。カタログ値と、遠くは違わなかった。航続距離は473kmがうたわれる。

車重が軽ければ圧巻のオフローダーに?

4モーターによる悪路の走破性は、ずば抜けて高い。渡河水深は850mmに対応し、エンジン版のGクラスより優れるとか。実際は、もう少し深い川も渡れるそうだが。

駆動用モーターは、回転初期から最大トルクを発揮するため、駆動系の反応速度は従来より150倍も高速だという。デフロックへ相当する機能も即座に利用でき、必要なタイヤへ必要なパワーを加えることも朝飯前だ。

メルセデス・ベンツG 580 ウィズEQテクノロジー AMGライン・プレミアムプラス(英国仕様)
メルセデス・ベンツG 580 ウィズEQテクノロジー AMGライン・プレミアムプラス(英国仕様)

内側のリアタイヤの回転を抑え、外側を高速に回すことで、低速域で鋭い旋回もできる。ハンドブレーキターンとパワードリフトを同時に繰り出すような機能といえ、森林や岩場で効果的。狭い駐車場でも。通常の最小回転直径は、13.6mあるのだが。

オフロード用クルーズコントロールは、速さを3段階から選べる。ドライバーはステアリングを操作するだけで、システムがトラクションを引き出し、悪路を容易にクリアできる。これで車重が軽ければ、圧巻の性能を持つオフローダーになるはず。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マレー・スカリオン

    Murray Scullion

    役職:デジタル編集者
    10年以上ジャーナリストとして活動し、雑誌、新聞、ウェブサイトに寄稿してきた。現在はオンライン版AUTOCARの編集者を務めている。オースチンやフェラーリなど、1万円から1億円まで多数のクルマをレビューしてきた。F1のスター選手へのインタビュー経験もある。これまで運転した中で最高のクルマは、学生時代に買った初代マツダMX-5(ロードスター)。巨大なジャガーXJ220も大好き。
  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    役職:編集委員
    新型車を世界で最初に試乗するジャーナリストの1人。AUTOCARの主要な特集記事のライターであり、YouTubeチャンネルのメインパーソナリティでもある。1997年よりクルマに関する執筆や講演活動を行っており、自動車専門メディアの編集者を経て2005年にAUTOCARに移籍。あらゆる時代のクルマやエンジニアリングに関心を持ち、レーシングライセンスと、故障したクラシックカーやバイクをいくつか所有している。これまで運転した中で最高のクルマは、2009年式のフォード・フィエスタ・ゼテックS。
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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