【エスクァイア生産終了】トヨタの狙いは? 車種の「売れる/売れない」二極化進む背景

公開 : 2021.09.27 05:45  更新 : 2021.10.22 10:06

トヨタ・エスクァイアが生産終了。トヨタの販売体制変更でますますモデルのリストラが進む販売動向について解説します。

3姉妹 後発エスクァイア生産終了

執筆:Yoichiro Watanabe(渡辺陽一郎)
編集:Taro Ueno(上野太朗)

トヨタのホームページ上でエスクァイアを見ると「21年12月上旬をもって生産終了」と記載されている。

エスクァイアはミドルサイズのミニバンで、ヴォクシーノアの姉妹車でもある。

生産終了が発表されたトヨタ・エスクァイア
生産終了が発表されたトヨタ・エスクァイア    トヨタ

もともとヴォクシーはネッツ店、ノアはカローラ店で販売され、トヨタ店とトヨペット店はこの2車種と同タイプのミニバンを用意していなかった。

そこで現行ヴォクシー&ノアと基本部分を共通化したエスクァイアを開発して、2014年にトヨタ店とトヨペット店から発売した。

そのためにヴォクシー/ノア/エスクァイアという3姉妹車を構成したが、エスクァイアはトヨタ店とトヨペット店のイメージにあわせて、内外装を上質に仕上げていた。

価格もヴォクシー&ノアに比べて少し高い。

そしてエスクァイアには、ヴォクシーやノアと違ってエアロパーツ装着グレードは用意されず、5ナンバーサイズの標準ボディのみだ。

このような商品力の違いもあり、エスクァイアの売れ行きが低迷して廃止されることになった。

トヨタ販売体制変更で生まれた「差」

エスクァイアの廃止について、トヨペット店では以下のように述べた。

「エスクァイアの受注は、2021年9月21日に終了した。以前は当店で販売している背の高い5ナンバーミニバンは、エスクァイアのみだった」

トヨタ・ヴォクシー/ノア/エスクァイア
トヨタ・ヴォクシー/ノア/エスクァイア    トヨタ

「それが今ではヴォクシーとノアも購入できる。そのためにエスクァイアから、エアロパーツを装着したヴォクシーに乗り替えるお客さまも増えた。エスクァイアの売れ行きは下がり気味だ」

このコメントとおり、以前はヴォクシーはネッツ店、ノアはカローラ店、エスクァイアはトヨペット店/トヨタ店の取り扱いだったから、トヨペット店でヴォクシーやノアは買えなかった。

それが2020年5月からは、全国の全店ですべての車種を買えるようになり、トヨタ店やトヨペット店もヴォクシーとノアの取り扱いを開始した。

その結果、トヨペット店でもヴォクシーが好調に売られ、エスクァイアは下がった。

直近の2021年8月の登録台数は、ヴォクシーが4243台(対前年比は91.5%)、ノアは3080台(92.7%)だが、エスクァイアは730台(41.7%)と少ない。ヴォクシーの17%にとどまる。

二極化進む アルヴェルでも同じ現象

全店が全車を扱う販売体制に移行すると、人気の高い販売しやすい車種は、すべての店舗で好調に売れて登録台数をさらに伸ばす。

逆に人気が下降気味の車種は、ユーザーを奪われて、ますます落ち込んでしまう。

トヨタ・アルファード(上)/ヴェルファイア(下)
トヨタ・アルファード(上)/ヴェルファイア(下)    トヨタ

この売れ行きの二極分化を明確に示したのが、アルファードとヴェルファイアの姉妹車だ。

以前はネッツ店が扱うヴェルファイアの売れ行きが、トヨペット店のアルファードを上まわった。

2015年に現行型へフルモデルチェンジされた後も、ヴェルファイアが多かったが、2018年のマイナーチェンジで順序が変わった。

アルファードがフロントマスクのデザインを派手に変更して、ヴェルファイアの売れ行きを追い抜いた。

この販売格差が2020年5月におこなわれた販売体制の変更で加速され、2020年下半期(7~12月)の登録台数は、アルファードが9025台に達する一方、ヴェルファイアは1218台だから7倍以上の販売格差に至った。

そのために2021年4月のマイナーチェンジでは、ヴェルファイアのグレードが大幅に減らされた。

この影響で、ヴェルファイアの登録台数は1か月平均で400台前後まで下がり、アルファードは9000台前後だから大差がついた。

アルファードとヴェルファイアは、基本的には同じクルマなのに、全店が全車を扱うようになって最終的には20倍以上の販売格差となった。

記事に関わった人々

  • 渡辺陽一郎

    Yoichiro Watanabe

    1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆様にケガをさせない、損をさせないこと」を重視して、ユーザーの立場から、問題提起のある執筆を心掛けている。買い得グレードを見極める執筆も多く、吉野屋などに入った時も、どのセットメニューが割安か、無意識に計算してしまう。

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