【エスクァイア生産終了】トヨタの狙いは? 車種の「売れる/売れない」二極化進む背景

公開 : 2021.09.27 05:45  更新 : 2021.10.22 10:06

リストラが狙い? 姉妹モデル不要に

トヨタが全店で全車を扱う販売体制に移行した目的は、国内販売のリストラだ。

その効果は明確で、販売体制の変更後、1年少々でエスクァイアヴェルファイアは売れ行きを大幅に下降させた。

トヨタ・クラウン
トヨタ・クラウン

エスクァイアは前述のとおり受注を終了しており、ヴェルファイアも次の大幅な改良で打ち切られるだろう。

ヴォクシー/ノア/エスクァイア、アルファード/ヴェルファイアといった姉妹車は、もともと販売系列があるために生み出された。

全店が全車を扱えば姉妹車も不要だ。

そして全店が全車を扱うと、車種ごとの販売格差が自然に広がり、廃止すべき車種も浮き彫りにされる。これらはすべてトヨタのねらいどおりだ。

トヨタは販売の低調な車種の廃止を既に進めており、マークX、プレミオ/アリオン、ポルテ/スペイド、プリウスαなどは、すでに終了した。

ルーミーの姉妹車だったタンクも廃止されている。

また全店が全車を扱うようになり、もともと販売の伸び悩んでいたクラウンは、登録台数がさらに下がった。

2021年の売れ行きは、1か月平均で約2000台だ。先代型がモデル末期だった2017年でも、1か月平均は2400台だったから、クラウンにとって全店が全車を扱う販売体制は不利に作用している。

その結果、クラウンをセダンからSUVに変更する話まで浮上した。

実際にトヨタ店からは「クラウンに乗っていたお客さまが、新たに取り扱いを開始したアルファードやハリアーに乗り替えるようになっている」という話も聞かれる。

リストラの中でも「創造」は必要

販売店の数も、以前に比べると減っている。

国内で展開するトヨタの店舗数(レクサスを除く)は、1990年頃から約20年間は、5000店舗前後で推移しており、2010年頃がピーク(5000店舗超)となった。

先日登場したトヨタ・カローラ・クロス
先日登場したトヨタ・カローラ・クロス    トヨタ

ところがその後は減少傾向に入り、2015年は約4800店舗、2020年には約4600店舗となった。

そして全店が全車を扱うと、実質的には、販売系列を撤廃したのと同じことだ。

以前はネッツ店とトヨタ店では取り扱い車種が違ったから、2系列が隣接した地域でも共存できたが、両店舗ともにトヨタの全車を扱えば厳しい競争関係に置かれる。

また以前はアルファードはトヨペット店、ヴォクシーはネッツ店の専売だったから、各車種が欲しいユーザーは、遠方でもその販売店まで出かけた。

しかし全店が全車を扱えば、その必要はない。購入しやすい自宅付近で買う。

そうなると地域性やサービスに応じて、販売店や販売会社の業績にも格差が生じる。

販売会社によっては、従来の新車店舗をカーシェアリングなどに切り替える動きも見られるが、販売規模の縮小は避けられない。

車種数も減るので、ユーザーにとっては、さまざまな選択肢が縮小に向かう。

先に挙げたトヨペット店からは「エスクァイアの売れ行きはたしかに低調だったが、5ナンバーサイズのボディと上質な内装に愛着を持つお客さまは多い。売れ行きが下がったのに、テコ入れを行わず、廃止されるのは残念だ」という声も聞かれる。

今後は環境対応、自動運転などの開発投資が必要で、なおかつ少子高齢化により、日本ではクルマの売れ行きが頭打ちだ。

リストラを行う事情は理解できるが、同時に新しいサービスを生み出す必要もある。

定額制でクルマを使えるKINTOはその1つだが、手頃な価格で購入できる運転の楽しい新型車にも期待したい。

記事に関わった人々

  • 渡辺陽一郎

    Yoichiro Watanabe

    1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆様にケガをさせない、損をさせないこと」を重視して、ユーザーの立場から、問題提起のある執筆を心掛けている。買い得グレードを見極める執筆も多く、吉野屋などに入った時も、どのセットメニューが割安か、無意識に計算してしまう。

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