【引退後も多忙な日々】ジェンソン・バトン 元F1ドライバーが夢中になれるもの

公開 : 2021.09.26 19:25  更新 : 2021.09.27 17:34

誰かのためにクルマを作ること

この2シーター・クーペは、ロータスの新型エミーラと同様に、トヨタ由来の3.5Lスーパーチャージャー付きV6エンジンを搭載し、6速MTまたは7速デュアルクラッチを選択できる。

仕様は、伝統的なブリティッシュ・レーシング・グリーンの「クラシック」(最高出力436ps)、1968年にチーム・ロータスが採用したタバコブランドの赤・白・金のカラーリングを施した「ゴールドリーフ」(最高出力507ps)、そして黒地に金のトリムを添えた「ジョン・プレイヤー・スペシャル」(最高出力608ps)の3種類。

ジェンソン・バトン
ジェンソン・バトン

生産台数はわずか62台で、アンステッドによれば、そのほとんどがすでに販売されているという。来春には納車が開始される予定だ。

バトンによるテストコースでの作業が残っているため、今のところパフォーマンス数値は公表されていない。彼は性能について、次のように述べている。

「最高速度のストレートライン・テストを行っていないので、(パフォーマンスが)どうなるのかはわかりません。でも、608psで1000kgの車重であれば、かなりハイレベルになるでしょうね」

今、モータースポーツに人生を捧げてきた男の想像力を真にかきたてているのは、市販車の開発だ。彼は米国で最も混雑するフリーウェイの1つを指して、「わたし達はいつも、405号線でうまく走ればどこでも走れると考えています」と話す。

「市販車の開発は、レースカーの開発よりもエモーショナルです。というのも、誰かのために何かを作っているという感覚があるからです。それだけでなく、自分も1台持つことになるんですよ」

「誰かのために開発しているのだから、運転しやすいものでなければなりません。レーシングカーのようにセッティングしたら、誰もが気に入るとは限らないし、へとへとに疲れてしまうかもしれません」

「レーシングカーは非常に尖っていて、乗用車ではありえないような特性を持っているので、本当の意味でのバランスが必要なのです。62人の幸運な人々のためにこのクルマ開発しているということを理解することが大切なのです」

次のモデルはすでに決まっている

ラドフォード社は1948年にハロルド・ラドフォードが英国で設立し、ビートルズのためにミニを製作するなどして名を上げたコーチビルダーだ。顧客の「贅沢」な要求に合わせてクルマをカスタマイズする。同じクルマは2台とない。

カリフォルニアで生まれ変わってから初めて作られた62-2は、非常に限定的なモデルであるが、ラドフォードは埃をかぶった過去の名前を復活させることには意味があるとしている。また、新たなパートナー企業との共同開発も予定されている。

ラドフォード・タイプ62-2
ラドフォード・タイプ62-2

「次のパートナーはすでに決まっていて、クルマはほぼ完成しています」とアンステッドは言う。

スポーツカーではありませんが、非常にエキサイティングで、気に入ってもらえると思います。来年の第1四半期に公開される予定で、3台目と4台目もすでに決まっています」

しかし、気候変動の脅威により世界はめまぐるしく変化し、規制がますます厳しくなる業界にいることは、エクストリームEに参加しているバトン自身がよく知っている。EVのパワートレインはどうなるのだろうか?

「可能性はあります!」と、バトンは得意の満面の笑みで言う。

「今はわたし達にとって、初めて内燃機関を搭載したクルマを手に入れたことに興奮しています。このクルマのサウンドは非常に素晴らしいものです。しかし、将来的には誰もがEVやバイオ燃料、水素を利用するようになるでしょう」

「OEMメーカーも当然その方向に進みたいと思っています。将来的には、わたし達だけがEVメーカーになるわけではありませんよ」

ジェンソン・バトンは人生を謳歌している。長年にわたってF1ライフを楽しんできたバトンは、今では献身的な家庭人であり、カリフォルニアの新居を気に入っている。

引退後はさまざまなチャレンジを経験してきたが、ラドフォードでは、その大きなエネルギーを向けるべき場所を見つけたようだ。彼の興奮は伝染しやすい。問題は、完成したクルマがどのように走り、どのように評価されるかということだ。彼は誰よりもそれを知りたがっている。

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