【ドアで選ぶ? 全高で選ぶ?】スズキ「ワゴンRスマイル」の狙う市場

公開 : 2021.10.04 19:45

スズキの軽自動車「ワゴンRスマイル」を試乗。スライドドアが付いて、ワゴンRよりも背が高い新型です。狙うマーケットを分析しました。

ワゴンR「スマイル」 登場の背景

執筆:Hajime Aida(会田肇)
撮影:Masanobu Ikenohira(池之平昌信)

1993年に登場以来、ハイト系ワゴンとして一世を風靡したワゴンRに、スライドドア仕様が登場した。

「ワゴンRスマイル(以下:スマイル)」である。

ワゴンRスマイル・ハイブリッドX(コーラルオレンジメタリック+アーバンブラウン2トーンルーフ/FF)。全高はワゴンRより45mm高く、スーパーハイトワゴンのスペーシアより90mm低い。
ワゴンRスマイル・ハイブリッドX(コーラルオレンジメタリック+アーバンブラウン2トーンルーフ/FF)。全高はワゴンRより45mm高く、スーパーハイトワゴンのスペーシアより90mm低い。    池之平昌信

ワゴンRは背を高めとしたことで生み出された広い室内空間が人気だったが、今はそれよりも背が高いスーパーハイト系ワゴンにトレンドが移っている。

中でもこのカテゴリーで人気なのがスライドドアで、ヒンジドアと違って狭い駐車場でも壁や隣に駐まっている車両を気にせず楽に乗り降りができるメリットがある。

この使い勝手の良さを一度味わってしまうと後戻りはできないようで、その人気はデータからも読み取れる。

スズキの調査によれば、軽乗用車全体でスライドドア車の比率は順調に伸びており、2012年の35.3%から20年では52.3%と半数を超えるまでになっているという。

ただ、もっと身近なサイズ感でスライドドア機構が欲しいというユーザーは相当数存在した。

そのカテゴリーをいち早く確立したのがダイハツ「ムーヴ・キャンバス」だった。今やその売れ行きは、本家のムーヴを上回る勢いだ。

そうした状況にもかかわらずスズキはスライドドア搭載車のラインナップが不足していた。そんな状況下において、満を持してこのカテゴリーに投入されたのがスマイルというわけだ。

スライドドア メリット/デメリット

スマイルは全高が1695mmと、1800mm近くのスーパーハイト系よりも低くワゴンRよりも少しだけ高い。

つまり、「スライドドアは欲しいが、全高は1700mm以下で十分」という、ワゴンR並みの運転感覚で、スライドドアの使い勝手の良さを味わえるのがスマイルと言っていいだろう。

ハイブリッドXのシートは、ライトグレーのファブリック表皮。質感・ステッチの配色にもこだわっている。リアドアは両側が電動のスライドドアなので、手がふさがっているときの乗降性は大きなメリットだ。
ハイブリッドXのシートは、ライトグレーのファブリック表皮。質感・ステッチの配色にもこだわっている。リアドアは両側が電動のスライドドアなので、手がふさがっているときの乗降性は大きなメリットだ。    池之平昌信

このカテゴリーは前述したようにダイハツのムーヴ・キャンバスが先行していた。それだけに、そのライバルを十分研究し尽くして登場しているのは言うまでもない。

年代の高い層からすればスライドドアは貨物車のアイテムという印象が強いが、「30歳代以下では、子供の頃からミニバンなどでスライドドアに馴染んでいる(チーフエンジニアの高橋正志氏)」ので、抵抗感はまったくないんだそうだ。

ただ、スライドドアを採用するならその使い勝手は少しでも高めておきたい。

そこでスマイルではスライドドアの開口部を拡大。スズキのスーパーハイト系ワゴンである「スペーシア」と比べれば、それより高さこそ劣るが、左右の開口部は同等を実現した。

もちろん、スライドドアはエントリグレードの「G」以外はすべて両側とも電動式を採用。予約ロック機能も備え、リクエストスイッチでも操作可能とした。

ただ、スライドドア故の弱点もある。

電動式とすることでワゴンRよりも車重が約50kg以上も重く、大人1人分をいつも余計に運んでいる格好となってしまうのだ。これにより、軽快な走りという点では少し物足りなさを感じてしまう可能性はある。

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