ホンダNSXとの惜別 NA1とNA2、NC1 和製スーパーカー3世代を比較 前編

公開 : 2021.12.25 07:05  更新 : 2022.01.19 08:58

技術に関心を持つ人を惹きつける

しかし、グランツーリスモやニードフォースピードといったテレビゲームの世界では、NSXは強かった。若者が深夜に楽しむサブカルチャーの世界では、大きな存在感を示していた。

若すぎて運転免許を持てない10代前半の心に、レンダリングされた日本製スーパーカーは深く刻まれた。そんな1人が、ジェフ・ドビー氏だ。ホンダに身も心も魅了され、今回ご登場願った見事なNA1型NSXを大切にしている。

ホンダNSX(初代NA1型/1990〜2005年/英国仕様)
ホンダNSX(初代NA1型/1990〜2005年/英国仕様)

マニュアルのトランスミッションに、パワーアシストの付かないステアリングが搭載された、ストイックな仕様だ。走行距離は、もうじき2万6000kmになろうかという浅さだという。

「子供の頃は、それほどNSXが大好きというわけではありませんでした。部屋に貼っていたポスターはフェラーリ。308GTBやベルリネッタ・ボクサー、512BBなど」。と笑顔でドビーが話す。

「グッドウッド・サーキットに近い、英国南部のミッドハーストという街に住んでいた時期がありました。ある日、隣に住む年配の男性がNSXに乗り換えたんですよ。ボディはあちこち凹んでいて、トランクに台車を載せて使っていたりしましたね」

「そのクルマの影響で、興味を持つようになりました。人とは違うクルマが欲しいと思っていたので、その隣人を説得して売ってもらいました。それがNSXの始まりです」

「それから、このクルマに乗り換えています。ステップアップするように。自分のようなクルマ好きや、技術に関心を持つ人を惹きつけるようですね。NSXはとても完成度が高いと思います」

デザインは発表時から注目された

NSXプロジェクトが始まった頃、ホンダからHP-Xというコンセプトカーが発表された。そのスタイリングには、イタリアのピニンファリーナ社が関わっていた。

一方で、量産車としてNSXのデザインをまとめたのは、当時のホンダのデザイン部門。そのスタイリングは、発表時から焦点となる話題の1つだった。

ホンダNSX(初代NA1型/1990〜2005年/英国仕様)
ホンダNSX(初代NA1型/1990〜2005年/英国仕様)

ドビーが話を続ける。「斜め後ろからの見た目は、正直あまり好きではありません。開発時に、リアのトランクを大きくする決定をしました。ホンダらしいといえますが、少し実用的すぎると思います」

「スーパーカーへの判断として良かったのかどうか、今でもわかりません。でも、他とは違うことは確かですね」。そう話しながら、フォーミュラ・レッドに塗られたクルマの鍵を貸してくれた。

ホンダNSXのオーナーの多くは、その魅力を人に知って欲しいと考えている。F-16戦闘機にインスパイアされたという、ルーフがブラックに塗られたコクピットに座る。VTECエンジンは臨戦態勢にある。

張り詰めた緊張感までは感じられないものの、NSXのすべては高度にチューニングされている。自然吸気のV6エンジンは、アクセルペダルの操作に対して瞬間的に反応する。アイドリングからレブリミットまで、漸進的にパワーが高まる。

この続きは中編にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    グレッグ・マクレマン

    Greg Macleman

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジェームズ・マン

    James Mann

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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