三菱K-EVコンセプトXスタイル登場 eKクロスっぽい軽EV 普及のための課題は?

公開 : 2022.01.19 05:45

EVの風は吹いている でも……

アイミーブによる社会受容性、また技術面ではアイミーブによる基礎技術を応用したアウトランダーなど向けPHEV(プラグインハイブリッド車)の量産により、三菱社内にはK-EVコンセプトXスタイル開発に対する十分な知見がある。

また、K-EV全体構想としては、日産と軽自動車事業全般で協業するNMKV社では、三菱は日産のEV関連の知見を融合させることができたといえる。

三菱K-EVコンセプトXスタイル
三菱K-EVコンセプトXスタイル

さらには、2010年代後半からグローバルで急激に拡大しているEVシフトの流れによって、EV向けのリチウムイオン電池、モーター、各種制御システムのコスト削減も可能になってきた。

こうした過去の経緯と、直近での市場概要を加味して、K-EVコンセプトXスタイルが降臨した。

つまり、導入時期としては時代の流れに沿っていると思われる。

三菱関係者によると、三菱が軽EV市場への参入を正式表明してからこれまでに、企業関係と個人ユーザーの双方から購入を前提とした問い合わせが数多いという。その比率については「ほぼ5対5」という現状だ。

アイミーブとK-EVコンセプトXスタイルを比べると、価格はアイミーブ初期モデル比で200万円以上、またアイミーブ後期モデル比でも各種購入補助金を考慮すると100万円程度以上安いという計算になる。 

価格でのハードルはたしかに下がったが、これで軽EV市場全体が一気に拡大するとは言い切れない側面もある。

リセールバリューも課題に……

課題はリセールバリューにある。

軽EVの商品価値を継続的に高めることで、さらなる需要につながる好循環を生む。

三菱K-EVコンセプトXスタイル
三菱K-EVコンセプトXスタイル

メーカーとして二次流通(中古市場)を直接的にコントロールすることはないと思われるが、例えばサブスクリプションモデルを活用するなど、軽EV市場における流通の基盤を構築することが重要だ。

もう1つ、大きな課題は、社会との融合をどう進めていくかだ。

具体的には、メーカーと地方自治体が連携した、地域住民や地域企業への軽EV活用に関する丁寧な説明である。

なぜいま、世の中にEVが必要であり、その1つとして軽EVが登場したのかを、住民や企業と膝を詰めで語り合うことが重要だ。

そのうえで、軽EVはガソリン車のような使い方は現状ではできないことを理解してもらう必要がある。

例えば、満充電と満タンでの航続距離は2倍以上違うこと。充電にはガソリン給油より時間がかなり長いこと。そのため、移動と充電の計画を事前にしっかり立てることなど基本的な事柄だ。

軽EVは、たんなる軽自動車の置き換えではなく、軽EV普及のためには社会全体が変わろうとする意識変化が必然である。

アイミーブ登場から10年以上の月日が流れ、2022年は軽EV元年になるのか?

肝は、人々の社会に対する意識の持ち様にあると思う。

記事に関わった人々

  • 執筆

    桃田健史

    Kenji Momota

    過去40数年間の飛行機移動距離はざっと世界150周。量産車の企画/開発/実験/マーケティングなど様々な実務を経験。モータースポーツ領域でもアメリカを拠点に長年活動。昔は愛車のフルサイズピックトラックで1日1600㎞移動は当たり前だったが最近は長距離だと腰が痛く……。将来は80年代に取得した双発飛行機免許使って「空飛ぶクルマ」で移動?
  • 編集

    AUTOCAR JAPAN

    Autocar Japan

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の日本版。

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