シトロエンe-ベルランゴへ試乗 50kWhで航続距離292km 欧州では純EVのみに

公開 : 2022.01.30 08:25

活発な発進加速に慣れ親しんだ乗り心地

ロングホイールベース版の場合、全長が4.8m近くへ伸びるから、スーパーマーケットの駐車場での取り回しには少し気を使うかもしれない。大きなサイドミラーを含めると、全幅は2.1m程もある。

7シーターが必ずしも必要でなければ、ショートホイールベース版となるMの方が、市街地という環境には向いている。

シトロエンe-ベルランゴ XLフィール(英国仕様)
シトロエンe-ベルランゴ XLフィール(英国仕様)

e-ベルランゴの車重は2440kgに達するが、走りは充分に活発。前輪を駆動する電気モーターは138psと目立った数字ではないものの、0-100km/h加速は9.0秒となかなか鋭い。最高速度は135km/hと控えめだが、クルマの性格を考えれば充分だろう。

アクセルペダルの反応は、スポーツ・モードを選ぶと向上する。ただし、勢いよく加速したり、高速を長時間保つほど航続距離も短くなる。エコノミー・モードなら、穏やかになる。

乗り心地は、われわれがベルランゴに慣れ親しんできた、しなやかさを維持している。シャシー・エンジニアは、姿勢制御を多少緩くしてでも、優れた衝撃吸収性と落ち着きのあるマナーを与えたいと考えているようだ。

郊外の道を速めに運転してみて、楽しいと思えることもそのまま。ロングホイールベースでは少々手に余ることもあるが、ステアリングホイールの重み付けはちょうど良く、反応も正確。常に狙ったとおりに操れる。ドライバーもうれしいクルマだ。

ボトルネックになる航続距離

シトロエンe-ベルランゴは、とても良くできたファミリーワゴンではある。しかし、内燃エンジン版と比べて、利便性の幅は狭められている。車内空間の使い勝手は優秀ながら、限られた行動範囲は多くのユーザーにとってボトルネックになるはずだ。

エントリーグレードは手頃な価格で、16インチのスチールホイールと肉厚なタイヤが組まれている。その道具的な雰囲気に、惹かれるという人も多いだろう。カタチとしての能力はとても高い。だが、クルマとして大切なもう1つの能力が及ばない。

シトロエンe-ベルランゴ XLフィール(英国仕様)
シトロエンe-ベルランゴ XLフィール(英国仕様)

e-ベルランゴには、エアコンなどの快適装備が消費するエネルギー量を教えてくれる、個別のメーターが付いている。エコノミー・モードを選ぶと、ヒーターの効きは弱くなるが、後続距離は少し伸びる。気持ち的な制限も、少しは緩められるだろう。

シトロエンe-ベルランゴ XLフィール(英国仕様)のスペック

英国価格:3万495ポンド(約472万円/英国政府補助金適用後)
全長:4753mm
全幅:1848mm
全高:1879mm
最高速度:135km/h
0-100km/h加速:9.0秒
航続距離:292km
電費:−
CO2排出量:−
車両重量:2440kg
パワートレイン:AC永久磁石モーター
駆動用バッテリー:50.0kWh
最高出力:138ps
最大トルク:26.4kg-m
ギアボックス:−

記事に関わった人々

  • 執筆

    スティーブ・クロプリー

    Steve Cropley

    AUTOCAR UK Editor-in-chief。オフィスの最も古株だが好奇心は誰にも負けない。クルマのテクノロジーは、私が長い時間を掛けて蓄積してきた常識をたったの数年で覆してくる。週が変われば、新たな驚きを与えてくれるのだから、1年後なんて全く読めない。だからこそ、いつまでもフレッシュでいられるのだろう。クルマも私も。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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