アウトバーンの王者 ポルシェ928 英国版クラシック・ガイド NA V8は堅牢 前編

公開 : 2022.03.19 07:05

V8エンジンのFRポルシェ、928。新車時の評価は今ひとつでしたが、クラシックとして近年は価格上昇中。英国編集部の解説です。

オールアルミV8にトランスアクスル

ポルシェ928の広告は強気に打たれた。「ドラマティックなポルシェ製4.5L V8を搭載した928は、これまでに製造されたどのクルマより、デザインや設計に力が注がれたラグジュアリー・スポーツクーペです」

さらに続く。「多くの技術的な革新が盛り込まれ、設計も高水準。自動車評論家を刺激し、1978年の欧州カー・オブ・ザ・イヤーを受賞しました」

ポルシェ928(1977〜1995年/英国仕様)
ポルシェ928(1977〜1995年/英国仕様)

スポーツクーペの受賞は快挙といえたが、ポルシェとしては、当然の結果だったのかもしれない。リアシートが備わるものの、サイズ的には子供用。夫婦のグランドツアラーには好適だった。

一方でポルシェ928の見た目は、モデルレンジの入り口にいた924との結びつきを感じさせるものだった。通常の911より高い価格は、ポルシェ・ファンを混乱させた。

フロントに搭載されたV8エンジンは、可能な限りリア寄りにレイアウト。前後の重量配分を最適化させるため、トランスミッションはリアデフと一体化される、トランスアクスル構造が取られていた。エンジンとは、強固なトルクチューブで結ばれた。

このV8エンジンは、オールアルミの新設計。油圧タペットに燃料インジェクションが採用され、オクタン価は95以上が指定された。最高出力は当初240psがうたわれたが、明らかにまだ伸びしろは残されていた。

重視されたのは、圧倒するような動力性能ではなく、粘り強さと扱いやすさ。ロードノイズや風切り音は聞こえるものの、エンジンは静かで、ドライバーを鼓舞することもなかった。だが、サスペンションは乗り心地よりも操縦性側へ振られていた。

アウトバーンの追越車線を突き進む

このような性格付けから、一部のドライバーには充分に響かなかった。それでも、ポルシェは928を進化させ、世界を席巻する能力を身に着けさせた。長距離もこなせるスーパーカー級モデルとして、価格も上昇していった。

928は生産終了までに、100馬力以上パワーアップしている。40%以上の上昇率だ。

ポルシェ928(1977〜1995年/英国仕様)
ポルシェ928(1977〜1995年/英国仕様)

トランスミッションは5速マニュアルも選択できたが、販売台数の約80%は、メルセデス・ベンツから調達したオートマティック。最先端の電子機器も搭載され、クルーズコントロールとエアコンはもちろん標準装備。ドアにも送風口が備わっている。

宇宙船のように印象的なスタイリングを描き出したのは、ヴォルフガンク・メビウス氏。ボディと一体型のバンパーを実現させ、後のモデルへも影響を与えている。

これから購入するなら、可能な限り整備記録がすべて残る車両を選びたい。サービスブックと荷室フロアのステッカーに記された、モデルコードが一致するかも確かめたい。

必要ならシリアスなパフォーマンスを披露する一方で、普段は穏やかなクルージングを楽しめる、FRのポルシェ928。RRとは異なり、リアタイヤがフロントを追い越そうという挙動もない。

ハンドリングはバランスに優れている。一方で、911のようなエッジ感は薄い。アウトバーンの追越車線を突き進む、キング・グランドツアラーといえるポルシェだった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マルコム・マッケイ

    Malcolm Mckay

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジェームズ・マン

    James Mann

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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