なぜ、フェラーリF50が人気を集めているのか? 新記録の5.5億円で落札

公開 : 2022.03.23 11:25  更新 : 2022.03.23 11:45

フェラーリF50の高騰が止まりません。3月18日のオークションで新記録となる5億4934万円で落札されました。高値の理由を検証します。

349台限定 F50はどんなクルマ

撮影:Kevin Van Campenhout/Artcurial Motorcars

フェラーリ社創立50周年を記念して1995年から349台限定で製作されたF50は、「公道を走るF1」を謳い、F1直系のテクノロジーと空力技術で構築された意欲作だった。

エンジニアリング最優先の構成で、カーボン・モノコックにパワートレインを結合してシャシーの構造材とする、F1と同様の手法で最高の走りを追い求めていた。

フェラーリのスペチアーレの中でも高騰が続く「F50」。とうとう5億円の大台を超えた。
フェラーリのスペチアーレの中でも高騰が続く「F50」。とうとう5億円の大台を超えた。    Kevin Van Campenhout/Artcurial Motorcars

そのためF50はドライバーにコントロールをすべて任せるという考えで、雑味となるパワーステアリング、ブレーキ・サーボ、ABSなどのアシストは、あえて省かれている。

快適装備はエアコンだけという割り切りぶりで、サイドウインドウの開閉も手動式だった。また、ルーフセクションを交換すればオープンのバルケッタ仕様にできた。

エンジンはF1マシンと同じテクノロジーで開発され、公道での使用を考慮して排気量は3.5Lから4.7Lに拡大され520hp(519.4ps)を発揮。カーボンを多用し車重は1230kgに抑えられていた。

フェラーリの頂点に位置するF50だけに、最高速度325km/h、0-100km/h加速3.87秒、0-1000m加速21.7秒と、当時のトップレベルといえる動力性能を備えていたのだ。

2013年から急騰 新車価格5000万円が……

F50日本導入時の販売価格は5000万円。

F40に比べて500万円アップし、現在人気のF355ベルリネッタは1535万円、F512Mは2320万円で新車が買えた時代である。

フェラーリF50(1996)の内装。サイドウインドウの開閉は手動式で、快適装備はエアコンだけ。
フェラーリF50(1996)の内装。サイドウインドウの開閉は手動式で、快適装備はエアコンだけ。    Kevin Van Campenhout/Artcurial Motorcars

日本にはF50が34台正規輸入され、F40とは異なりボディカラーは5色から選べた。現在と違ってオプションは用意されていなかったため、定価=購入価格だった。

2000年ごろのオークションでの落札額は5000~6000万円程度で、次期モデルのエンツォ・フェラーリが出たあとや、リーマン・ショック後も価格は大きく変わらなかった。

節目となったのがオークション・バブル前夜の2013年1月だ。グッディング・スコッツデイル・オークションで137.5万ドル(約1億2375万円)と大台を超え、オークション・バブル期に突入する。

2015年8月になると2億4750万円、2017年1月には3億6053万円まで跳ね上がる。2020年にはエンツォを超える額で落札され、288GTOに続くポジションを確立した。

高騰の勢いは衰えることはなく、2021年5月に4億1121万円、8月には4億3615万円と上昇。今年2月には4億4672万円をマークし、最高落札額を更新している。

記事に関わった人々

  • 執筆

    上野和秀

    Kazuhide Ueno

    1955年生まれ。気が付けば干支6ラップ目に突入。ネコ・パブリッシングでスクーデリア編集長を務め、のちにカー・マガジン編集委員を担当。現在はフリーランスのモーター・ジャーナリスト/エディター。1950〜60年代のクラシック・フェラーリとアバルトが得意。個人的にもアバルトを常にガレージに収め、現在はフィアット・アバルトOT1300/124で遊んでいる。

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