トヨタ・アイゴ 1.0 VVT-i

公開 : 2014.06.18 23:50  更新 : 2017.05.29 18:48

■どんなクルマ?

幾度となく試作段階から試乗してきたトヨタ・アイゴ。今回ようやく、僅かに輸入された小売版を英国にてテストするに至ったのである。

試作段階にて知り得た情報と大きく変わりがないこのクルマは、ツイッター社が設立されるよりも遥か以前から市街地に居住する人々の間で慣れ親しまれてきた。先代よりも僅かに大きくなっているが、それ以外は例に倣ってPSA(プジョーシトロエン・グループ)が共同開発したプラット・フォームを用い、後部のドアとウインドウ・スクリーンの傾斜角度は同プラット・フォームのプジョーやシトロエンと共通で、ボディ・パネルはそれぞれ別個のデザインを身に纏う。

フロントには大げさなX形のグリルが施され、差別化が図られている結果好き嫌いがはっきりと分かれることが予想される。もちろん形なんて二次的な要素に過ぎないのだから、ディーラーにて即座に自分好みにパーソナライズすることもできるのだが、現在用意されているボディー・カラーは3色のみで、オプションは多分に用意されているとは言い難い。

内装も同様に2種類のみしか用意されておらず、そのうちの一つはギラギラと輝くプラスティックのダッシュボードとなり、もしそれだけでは満足いかないという向きには特徴的なダブル・バブル・ルーフにツートン・カラーのデカールを貼ることも可能だ。

英国ではx、xプレイ、xプレッションからなる3グレードが用意され、3ドアと4ドアから選ぶことが可能となり、その他にxサイト、xクルーシブのスペシャル・エディションが用意される。今まで通り、中間グレードとなるxプレイが売れ筋になることが予想されるが、筆者にとっては、決して安くはないのだがDABラジオやアロイ・ホイール、xタッチ・メディアが装備されるxプレッションが最も魅力的に感じられた。

それよりも僅かに値上がりしたグレードがxクルーシブとなり、こちらの場合はスタイリングに的を絞ったアップグレードが施されている。動力源は今のところ先代譲りの3気筒1ℓのVVT-iを改良されたエンジン1種類のみが用意され、5速マニュアル・ギアボックスが標準で、仮に£700(12万円)の追加予算を支払えばXシフトなるセミATを選択することが可能だ。

■どんな感じ?

フォルクスワーゲンから非の打ちどころの無いアップがデビューして以来、われわれがシティカーに求める基準は1段階、いやそれ以上レベルが上がってしまったが、市街地での利便性や車そのものが生き生きとしているかどうか、また高速走行時でも滑らかであるか、などコアな部分での判断基準は大きく変わらない。そしてアイゴはこれら3つの重要な要素を見事にカバーできている。軽々とコントロールでき、ボディ・サイズは小さく、最小回転半径もタイトで、視界も良好なおかげで、もはや先代モデルよりもタウン・ユースに打ってつけだと心から思えた。

更には、溶接スポットを増やし、高張力鋼板の使用領域を広げたおかげでより剛性がが増し、身のこなしも軽くなった。乗り心地が忙しない印象は拭えないが、コーナリングでも過度に外乱に苛まれることなく非常に賢いバンプ処理を披露してくれる。全領域において適度なグリップと適切に調律されたフロント・エンドのおかげで、結果的にシティカーとして喜びに満ちた運転をすることができる。

エンジンはどちらかというと精彩に欠けるが、1.0ℓのユニットがデビューした当時は数々の賞を総なめにするほどの出来であった故、現在ではさらにパワーが引き出され、効率も上がり、現代を牽引する3気筒エンジンに引けを取らない仕上がりになった。エンジニアは発進時の力強さを引き出すためにギア比を調整し、結果として良い方向に転じた反面、中速域での活気に制限が掛かった印象が見受けられる。

ただし危惧することなかれ、これらの欠点は全体のバランスを損なう程のものではない。低められたフロント・シートはドライビング愛好家には好意的に受け入れられるはずだし、その他のパッケージングも熟練の域に達している。アイゴのトレード・マークとも言えるダブル・バブル・ルーフはデザイン面だけでなく、特筆に値する後部座席のヘッド・ルーム・クリアランスも約束する。4人の大人を乗せた際には、誰一人として不満をこぼす人はいないはずだし、トランクも非常にアクセスし易い。

アップと比べるとキャビンには首を傾げたくなるようなプラスチック素材が散見されるものの、あなた自身がカラー・オプションに傾倒していなければ選択肢の少なさに落胆することもないだろう。7インチのxタッチ・スクリーンは共用パーツではあるものの、直感的に操作ができ、メニューはシンプルで接続にも安定感があり、DABチューナーはライバルに負けないくらい簡単にチャンネルを合わせることができる。

■「買い」か?

2時間このクルマを疾駆させた結果、答えは買いだ。ここ数年の間、われわれはフィアット・パンダの持つ実用性と楽しさやフォルクスワーゲン・アップの洗練と熟練度合いに最高評価を与えた。ここにきてアイゴがデビューしたことにより、慎重に施された改良と、優しく穏やかではあるが革新的なアイデアは、得意満面な老舗メーカーを大きく揺るがす結果となるだろう。

もちろんトヨタだって、PSA(プジョー・シトロエン・グループ)から販売されるプラット・フォームを共有したモデル以外にも新たな有力かつ更に安価な小型車が軒並み足を揃えていることは百も承知だ。その上、どのメーカーも挙ってシティカー作りに情熱を燃やし、そのどれもがトップ5勢に食い入らんばかりの勢いであるのだから、われわれとしても飽くなきテストが続くことになりそうだ。

(ニック・カケット)

トヨタ・アイゴ 1.0 VVT-i

価格 £11,695(202万円)
最高速度 160km/h
0-100km/h加速 14.2秒
燃費 24.4km/ℓ
CO2排出量 95g/km
乾燥重量 900kg
エンジン 直列3気筒998cc
最高出力 70ps/6000rpm
最大トルク 13.1kg-m/4300rpm
ギアボックス 5速マニュアル

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