プジョー2008ハイブリッド・エア・プロトタイプ

公開 : 2014.07.07 23:30  更新 : 2017.05.29 19:00

■どんなクルマ?

こちらのプジョー2008には、プジョー・シトロエン・グループが新たに開発したハイブリッド・エア・トランスミッションの試作版が積まれている。グループは、新しいトランスミッションは非常に大きな試みで、2020年までには同社製品の平均燃費を50km/ℓまで底上げすることができるだろうと言う。

今現在の ’ハイブリッド’ 車といえば、内燃エンジンに電気モーターとバッテリー・パックを組み合わせたものが主流だ。プジョー・シトロエン・グループの打ち出したソリューションはトヨタや他社が開発した、ガソリン – 電気パワートレインよりもシンプルかつ、更に効率的だと主張する。

このシステムは ’ハイブリッド・エア’ と呼ばれているだが、’ハイブリッド・ハイドロリック(空気圧力)’ と言ったほうが理解しやすいかもしれない。この2008は同社製の81psを発揮する1.2ℓ3気筒自然吸気ガソリン・エンジンからパワー供給を受け、新しいギアボックスは遊星歯車機構を利用して設計される(原理としてはスターメー・アーチャー製の3段変速機能を持つ自転車用のリア・ハブと類同する)。

この類のギアボックスは、フロント・ホイールと、トランスミッション・ケースに隣接する前輪の間にマウントされた一対の水圧ポンプの間のパワーを分割することを可能にする。センター・トンネル部分に設置された高圧円筒タンクがアキュムレーターとしての役割を果たすのだ。このタンクの中に窒素と空気の混合物が詰められているのである。

後部座席の下側には従来のガソリン・タンクが収まる一方、トランク・ルームの下には低圧ストレージ用のタンクが設置される。トランスミッション内における、2機の円筒タンクと水圧ポンプは一連のパイプによって接続がなされ、閉回路内の流体伝達を司ると言うわけだ。

エンジンとトランスミッションは従来通り前輪のみにパワーを供給するのだけれど、それと同時に水圧ポンプはオイルをセンター・タンクに運ぶ仕組みになる。したがってオイルがタンクに強制的に押し込まれる際に、空気と窒素を圧縮する運びとなるのである。この時のオイル・プレッシャーは220barにのぼるという。

たとえば下り坂などエンジンのさほどの負荷がかからないシチュエーションでは、遊星歯車トランスミッションがポンプを作動させ、センター・タンクにはオイルを用いて圧力を加える。

高圧の下、センター・タンクが流体で満たされた時に、水圧ポンプを経てドライブ・ユニットに到達したパワーが、エンジンからのアシストを受けずに前輪を動かすのである。

惰性走行中、あるいは下り坂の途中ならば、減圧を受けたオイルは水圧ポンプに戻る前にトランク下の低圧タンクへと戻されるという仕組みだ。

■どんな感じ?

試乗するまでは本当にこんな事が起こり得るのだろうかと思わずにいられなかったのだが、実際にパリのど真ん中の大渋滞の中を走行して、この機構が非常に優れていることがわかった。

目に見える変更点としては、センター・コンソール上の3モードから選択できるオートマティック・トランスミッション・セレクターが追加されたことと、センター・タンク用の ’チャージ’ ボタンがタッチ・スクリーン上に表示されたくらいだ。

見掛け倒しに感じなくもないシンプルなドライブ・トレインの有効性は、走りだしてから数百メートルにて論証される結果となった。試作車両のインジケーターによると、パリのガード下に到達するほんの数秒でセンター・タンクをフル・チャージしているようだった。これに関してプジョー・シトロエンのエンジニアは、2008の場合オイル・タンクに蓄えたエネルギーはおよそ200m程度ならば、エンジンの力を必要とせずに走行できる量なのだという。

たった200m? とお思いの読者も多いことは察するが、停止と走行を繰り返すパリの道路ならば不足はないし、惰性走行によって得たエネルギーは(このシステムの場合、従来のように電気ハイブリッド車がブレーキングによって得ることのできるエネルギーよりも惰性走行で得るほうが良策)、そんな環境下を長い距離走るにも不足しないのである。

実際のところ15分間の試乗で実際にエンジンが仕事をしたのはわずか6分だった。エンジニア曰く、同じエンジンとトランスミッションを用いた標準的なモデルの燃費は同ルートで16.6km/ℓ程度だそうだ。それに対して、試作車両の燃費は28.3km/ℓから31.9km/ℓをマークする結果に至った。

初期の試作車両であるにも関わらず、このクルマはスムーズかつ簡単に運転できる同時に、29psのパワー増強分を明確に感じさせることもなかった。

■「買い」か?

興味が湧いてくるのも無理はないが、実際に買えるようになるまで少なくとも3年半は待つ必要がある。プジョー・シトロエンのエンジニアは、この技術を磨くには力を持ったパートナーが必要だという。

従来のバッテリー-電気ハイブリッド・トランスミッションを製造するよりも工場の建設コストは半分で済むそうだが、数百万台程度のBセグメントとCセグメントを毎年売り上げられなければ工場を設立しないと企業トップは決めているようだ。

この技術を市場に出すには巨額の投資を必要とすることに加えて、プジョー・シトロエンが単独で開発を進めることに恐れをなしていることも容易に想像できる。なぜならかつてのビデオ・テープ・レコーダーのような運命は絶対に辿りたくないからだ。

ただし、彼らが示すようにハイブリッド・エアはバッテリーや電気モーターのようにレア・アースに依存する必要がない。そのうえ、頑丈かつすでに確立された技術のみで構成されているのである。つまり、あとはこの技術に投資をしてくれる大きな自動車メーカーを待つのみなのだ。

(ヒルトン・ホロウェイ)

プジョー2008ハイブリッド・エア・プロトタイプ

価格 £15,000(262万円)
最高速度 NA
0-100km/h加速 NA
燃費 37.5km/ℓ
CO2排出量 50g/km
乾燥重量 1165kg
エンジン 直列3気筒1199cc
最高出力 112ps
最大トルク NA
ギアボックス 3速

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