AMGらしさの難しさ メルセデスAMG EQE 53へ試乗 686psと516kmのBEVサルーン

公開 : 2022.07.19 08:25

内燃エンジンで腕を鳴らしたAMGも、BEVへ取り組む時代。最大686psのEQEを、英国編集部が評価しました。

最高出力はオプションで686ps

メルセデスAMGは、バッテリーEV(BEV)版のSLSを2014年に生産している。ロングノーズのガルウイング・ボディに、748psの最高出力と193kmの航続距離を与え、当時としては印象的な内容だった。

とはいえ、英国価格は35万5000ポンドと超高額。生産台数は、ひと握りに限られた。

メルセデスAMG EQE 53 4マティック+(欧州仕様)
メルセデスAMG EQE 53 4マティック+(欧州仕様)

それから8年後の2022年、メルセデスAMGは新しいBEVのサルーンを発売した。今回試乗した、EQE 53だ。最高出力はノーマルで625ps。AMGダイナミック・プラスというオプションパッケージを追加すれば、686psへ増強できる。

航続距離は最長516km。大人4名が快適に座れる車内空間と、不足ない荷室も備わっている。英国価格はまだ未定だそうだが、11万5000ポンド(約1920万円)前後になる見込みだという。

いよいよメルセデスAMGも本格的にBEVへ取り組むのか、と感慨深い一方で、少しの疑問も抱かないわけではない。馬力は確かに素晴らしいが、メルセデス・ベンツのチューニング部門は、BEVをどう料理するのだろうか。

通常モデルとの差別化も、簡単ではないように思う。EQE 53には、メルセデス・ベンツEQE 350+と同じ、90.6kWhの駆動用バッテリーを搭載している。1つクラスが上になる、メルセデスAMG EQS 53も存在している。

アクセルを傾けた瞬間に駆動モーターが反応

明らかな違いとなるのが、駆動用モーター。内部のコイル構造が異なり、より多くの電流を処理できるAMG専用設計のものが積まれている。その結果、EQE 53の0-100km/h加速は3.4秒がうたわれる。

ローンチコントロールが追加されるダイナミック・プラスなら、3.2秒へ短縮される。このBEVのラグジュアリー・サルーンは、メルセデスAMGが手掛けたモデルのなかで、最速の加速力を備える1台として数えられる。

メルセデスAMG EQE 53 4マティック+(欧州仕様)
メルセデスAMG EQE 53 4マティック+(欧州仕様)

実際、運転してみるとEQE 53には舌を巻く。助手席の同乗者だけでなく、ドライバーも思わず唸ってしまうほど。

最高出力は、ドライブモードによって制限を受ける。ダイナミック・モードで312ps、コンフォート・モードで500ps、スポーツ・モードで563psといった具合だ。625psの全力を引き出せるのは、スポーツ+モードだけとなる。

さらに、ダイナミック・プラスの686psを召喚できるのは、レーススタート・モードを選んだローンチコントロールの加速時のみ。とはいえ、モードを問わずとても速いと感じるはず。

この速いという感覚を生んでいる理由が、レスポンスの鋭さ。パワフルな他のBEVと同様に、アクセルペダルを傾けた瞬間、EQE 53の駆動用モーターが反応する。加速Gの調整スイッチのようでもある。

内燃エンジンとは異なり、駆動用モーター内部に機械的な慣性は殆どない。トランスミッションの変速も存在しない。瞬発力でいえば、従来のどんなスーパーカーを持ってきても敵わないだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マイク・ダフ

    Mike Duff

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

関連テーマ

おすすめ記事