EVモードがデフォルト W214 メルセデスAMG E 53(2) 操縦性と快適性へ影を落とす要因とは?

公開 : 2025.06.25 19:10

直6プラグインHVで585psのAMG E 53 電気で最長101km走行可能 意欲的なボディに高性能さを実感する車内 エンジンとモーターの高い協調性 車重の影響を隠さない操縦性 UK編集部が試乗

電気だけで140km/hへ対応 静かで滑らかな加速

3.0L直6ツインターボ・プラグイン・ハイブリッドを得た、メルセデスAMG E 53の発進時は、エレクトリック・モードがデフォルト。なんと140km/hまで、エンジンを回さず対応でき、極めて静かで滑らかな加速を実現している。

運転してみると、AMGらしさを端々から感じられる。ステアリングホイールの操舵感には重厚感があり、高精度。乗り心地は硬めながら上質で、姿勢制御には締まりがある。

メルセデスAMG E 53 ハイブリッド 4マティック+ サルーン(英国仕様)
メルセデスAMG E 53 ハイブリッド 4マティック+ サルーン(英国仕様)

ブレーキペダルへ力を込めると、踏み初めは若干スポンジーで小さな段付きがある。運動エネルギーが、4段階制御で電気エネルギーへ変換されるためだ。だが更に傾けていくと、頼もしい踏み応えとともに、強力な制動力が立ち上がる。

エンジンは、活発に扱うとスピーカーから合成音が再生される。これは、若干安っぽいかもしれない。サイドウインドウを開けば、繊細で調律の整った、リアルな6気筒の叫びが放たれている。聞き惚れるほどではないとしても。

エンジンとモーターの高い協調性 0-100km/h3.8秒

スポーツ・モードやスポーツ+モードへ切り替えると、エンジンは即座に始動。本来のパフォーマンスを発揮する準備が整う。電気モーターとの協調性は高く、回転数を問わずパワーデリバリーはリニア。粘り強さも見事で、加速力には息を呑む。

トルクコンバーター式9速ATの仕事には、小さな不満も。エンジンとモーターのパワーを滑らかに処理しきれない場面があり、変速も稀にぎこちなく感じられた。

メルセデスAMG E 53 ハイブリッド 4マティック+ サルーン(英国仕様)
メルセデスAMG E 53 ハイブリッド 4マティック+ サルーン(英国仕様)

とはいえ、0-100km/h加速は3.8秒。先代のE 53より0.7秒も鋭い。間接的に置き換える、V8エンジンを積んだ先代のE 63は、3.4秒で処理していたが。290kg重い、2240kgの車重が足かせになっているのだろう。

サスペンションは、前がダブルウイッシュボーン式で、後ろがマルチリンク式。ツインバルブのアダプティブダンパーが組まれ、姿勢制御の締りも良い。

車重の影響を隠さない高負荷時の操縦性

操縦性は、基本的には安定感に優れ好ましい。ステアリングの反応は正確で、自信を持ってフロントノーズの向きを選べる。高機能な四輪駆動システムは、手強いワインディングでも不満ないトラクションを保ってくれる。

連続するカーブでの、第一印象は機敏。ところが、ステアリングの切り角が増したり、積極的な回頭を求めると、車重が影響してか反応が若干鈍くなる。リアアクスルが、操縦に対してワンテンポ遅れるような感覚も伴う。

メルセデスAMG E 53 ハイブリッド 4マティック+ サルーン(英国仕様)
メルセデスAMG E 53 ハイブリッド 4マティック+ サルーン(英国仕様)

高負荷時には、安定感にもしわ寄せがある。スポーツ+モードでも、サスペンションは完全には姿勢を手中に収めきれない様子で、ラインが乱れる場面もあった。路面の凹凸を吸収しきれず、乗り心地にも陰りが出る。

全力を召喚しようとすると、トルクステアも感取される。トルクの急激な高まりを、四輪駆動システムは処理しきれていないのかもしれない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    グレッグ・ケーブル

    Greg Kable

    英国編集部ライター
  • 執筆

    ジェームス・ディスデイル

    James Disdale

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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