懐かしのイタリアン・ロードスター アルファ・ロメオ・スパイダー & フィアット・バルケッタ 後編

公開 : 2022.07.30 07:06

見た目以上に窮屈ではないインテリア

アルファ・ロメオ・スパイダーは、アレックス・ペイン氏がオーナー。1996年式の右ハンドル車だ。アルファ・マニアでもある彼は、プロテオ・レッドのボディや同色で塗られたサイドシル・パネルなどの特長から、最初期のクルマだと考えている。

「2012年に、妻の60歳の誕生日として前のオーナーから購入しました。2000年までは社有車で、走行距離は13万km弱だったようです」

アルファ・ロメオ・スパイダー(916型/1995〜2005年/英国仕様)
アルファ・ロメオ・スパイダー(916型/1995〜2005年/英国仕様)

現在は22万kmを超えたが、ペインも含めて、これまでの丁寧なメンテナンスのお陰でヘタリは感じられない。「何年もアルファ・ロメオを楽しんできました。シルバーストーンへのドライブや、プレスコット・ヒルクライムへの参戦は忘れられません」

「2016年に、オランダのアルファ・ロメオ・クラブが開いたイベントへ参加したことは、素晴らしい思い出です。多くのアルファ・ファンと一緒に、ザントフォールト・サーキットを走り、素晴らしい時間でした」。とペインが頬を緩ませる。

今も古びて見えないバルケッタは、小さなドアハンドルまで同様。心地よいクリック感を伴って、ドアが開く。コンバクトなサイズながら、車内は思ったほど窮屈ではない。

ドライバーズシートが心地よく身体を包み込み、操作系のレイアウトは良好。ペダルが手前側に位置するのは、イタリア車の伝統でもある。

サスペンションは適度にしなやかで、ステアリングホイールは軽い。すぐに、起伏のある道を流したいという気分にさせてくれる。だが、高速で、とは思わない。カーブを描くボンネットに郊外の景色が反射し、バックミラーに遠ざかる並木道が映り込む。

2速で明らかになる4気筒エンジンの素性

ステンレス製エグゾーストが放つ音色が心地良く、エンジンを回したくなる。操縦系の感触の良さは、高速域でも変わらない。ホイールベースの短いバルケッタは、コーナーを小気味よく縫っていく。

ボディロールは小さくないものの、ソフトなスプリングとタイトなシャシー構造が融合し、荒れた路面を滑らかにいなす。舗装の剥がれた穴を通過しても、印象は悪化しない。

アルファ・ロメオ・スパイダー(916型/1995〜2005年/英国仕様)
アルファ・ロメオ・スパイダー(916型/1995〜2005年/英国仕様)

アルファ・ロメオ・スパイダーは、バルケッタより大柄。ドアもインテリアも、フロントガラスも大きい。そのぶん、操作に対するダイレクト感では劣る。車重が重く、サスペンションは引き締められていて、エンジンの慣性も目立つようだ。

シートはレザーで仕立てられ、インテリアの雰囲気は落ち着いている。ドライバーの正面に埋め込まれた黒い盤面のメーターも、そんな感覚を強める。

2速へシフトダウンして、アクセルペダルを踏み込むと、バランス取りされた4気筒エンジンの素性が明らかになる。スムーズなだけでなく、エネルギッシュさも秘めている。

クイックなステアリングに、洗練されたサスペンション設定が融合。変化の大きい道でも安定して進んでいく。

同時に、おおらかな個性も匂わせる。フィアットの弾くように軽快なシフトフィールや、踏みごたえのあるペダル類とは対照的。アルファ・ロメオのシフトレバーは長くストロークし、ブレーキペダルにも曖昧さがある。

記事に関わった人々

  • 執筆

    アーロン・マッケイ

    Aaron McKay

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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