良い意味で期待を裏切った名車 アルファ・ロメオ『GTV/スパイダー』の巧みな設計を振り返る【UK編集部コラム】

公開 : 2026.03.14 17:05

1994年に登場したアルファ・ロメオGTV(916)は、フィアットのハッチバックがベースとは思えないほど優れた走りと衝撃的なデザインを誇っています。巧妙なシャシー設計、楽しいエンジンなど魅力を振り返ります。

ハッチバックベースの傑作スポーツカー

その出自は、あまり期待できるものではなかった。1988年登場のフィアット・ティーポのプラットフォームをベースとしており、長い年月をかけて量産化に漕ぎつけた。

旧型のアルファ・ロメオGTV』は、ジョルジェット・ジウジアーロ設計の後輪駆動の4人乗りクーペだった。『アルフェッタ』の派生で、錆びやすい性質、リア搭載のトランスミッションと扱いにくいシフトレバーの相性の悪さといった問題点もあるが、魅力的で洗練された1台だった。

アルファ・ロメオGTV(916)
アルファ・ロメオGTV(916)

新型のGTVとそのコンバーチブル仕様『スパイダー』は(編集部注:当時の正式車名は『アルファGTV』、『アルファ・スパイダー』)、ティーポをベースにしているため必然的に前輪駆動となり、このプラットフォームでは不十分だと考える評論家も多かった(筆者を含む)。

だが、ジャンカルロ・トラヴァリオ氏の考えは違った。1990年代初頭、アルファ・ロメオのチーフシャシーエンジニアだった彼は、同僚と共に、ホンダシビックVTiと前輪駆動のロータスエランを開発のベンチマークとして選んだ。

スパイダー発表時、トラヴァリオ氏は筆者の取材に対して「シャシーのバランスを学ぶため」に180km/hでのドリフトを習慣的に行っていたこと、そしてエランへの熱意を語ってくれた。

エランの魅力的なダイナミクスの大部分は、巧妙なサスペンションとサブフレームブッシュに由来している。車輪とそのジオメトリを、激しい回転運動の中でも堅固かつ流暢に制御する効果がある。この部分に、アルファ・ロメオのシャシー開発チームも目をつけた。

磨き抜かれたシャシーとエンジン

開発初期のGTVとスパイダーは幅が狭く、後輪は拍子抜けするほど単純なシャシー設計で支えられていた。これはティーポの起源を露呈するものであった。しかし、開発途中でアルファ・ロメオの米国再進出計画(最終的に中止)が浮上し、市場調査により威圧的な外観を求められるようになった。そしてほぼ同時期に、生粋のクルマ好きで知られるフィアットCEOのパオロ・カンタレラ氏が、スパイダーとGTVのシャシーは不十分だと判断した。

そこで粗末なリアサスペンションは廃止され、超高剛性のアルミ製サブフレームを備えたマルチリンク式に置き換えられた。リアアクスルは、わずかに操舵するよう設計されている。

アルファ・ロメオGTV(916)
アルファ・ロメオGTV(916)

低~中程度のコーナリングフォースでは後輪がカウンターステアとなり、高速域(180km/hのドリフトなど)では前輪とわずかに同方向に操舵する仕組みだ。

筆者には、180km/hで白煙を上げるアルファの挙動を確認する余裕(スキル)はなかったが、低速域ではアンダーステアをまったく感じさせない従順さでコーナーを駆け抜け、驚きと喜びを与えてくれた。さらに、コーナー途中でアクセルを離すと、クルマがラインを締めていくのを感じられた。マツダMX-5のテールアウトドリフトほどの楽しさはないが、確実に面白く、雨天時にも頼もしかった。

楽しさをさらに高めたのは、アルファ・ロメオのツインスパークエンジンだ。ほぼ完全新設計で、各シリンダーに大小2本のスパークプラグ(計8本)と、ツインカムを採用。吸気効率を高めたほか、珍しいことに2本のバランスシャフトを備え、滑らかさを追求していた。

2.0L仕様では150ps、19kg-mのトルクを発生し、7000rpmのレッドラインを実現した。実際、レブリミッターが作動する7300rpmまで回ったものだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・ブレンナー

    Richard Bremner

    英国編集部
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

関連テーマ

おすすめ記事