450psのRRに7速MT ポルシェ911 スポーツクラシックへ試乗 1250台の特別仕様 後編

公開 : 2022.07.23 08:26

ポルシェが911に設定した4種類のヘリテージデザイン。その第2弾、スポーツクラシックを英国編集部が評価しました。

特別な千鳥格子の内装に7速MT

ポルシェ911 スポーツクラシックのドアを開くと、ペピータと呼ばれる新素材で、千鳥格子が編まれたファブリックが目に飛び込んでくる。最近のポルシェは他の限定仕様にも採用しているが、特別感が満点だ。

インテリアの残りの部分は、基本的には通常の911と変わらない。ブラウンのアニリン・レザーや、ダッシュボードのウッドトリムなどを除いて。

ポルシェ911 スポーツクラシック(欧州仕様)
ポルシェ911 スポーツクラシック(欧州仕様)

座面がクロス張りのシートは、座り心地が素晴らしく、サポート性も良好。ドライビングポジションは完璧だ。

キーを捻ってエンジンを始動。丸く短いシフトレバーを握ると、MTが7速であることに気づく。911のGT専用に開発された6速MTは、このクルマには搭載できないという理由はある。とはいえ、ちょっと段数が多い。

ゲート間の動きは滑らかで正確。手応えもいい。だが、狭い範囲に7速ぶんのゲートが切られているため、6速MTと同じように3速から5速へ自信を持って飛ばすことが難しい。このクルマで、唯一の不満といえる。

最高出力は550psもあるから、瞬発力に不足はない。1750rpmを超えた辺りからパワーもトルクも豊かに生み出され、あっという間に英国の法定速度、97km/hを突破してしまう。アウトバーンで160km/hを試してみたが、序の口だった。

最新モデルのように、気が遠くなるほどの動力性能ではない。バッテリーEVが即時的に発生させる最大トルクへ、筆者が慣れてしまったためかもしれない。

ターボより若干増したシャープさ

気温の高い日なら、後輪駆動であることへ気付かないほど、グリップとトラクションは甚大。相当にタイトコーナーを攻め立てて、初めてリアがもだえる仕草を見せた。

リアタイヤのサイズは315/30 ZR21。ピレリPゼロを完全に打ち負かすには、一筋縄ではいかないだろう。

ポルシェ911 スポーツクラシック(欧州仕様)
ポルシェ911 スポーツクラシック(欧州仕様)

通常の911 ターボより操縦性には自由度があるため、リアタイヤの挙動は重要でもある。どんなに手強い道でも意に介さないほどだが、スポーツクラシックの場合は、若干の繊細さも味わうことができる。

コーナーへ進入した時の挙動も、シャープさが僅かに増している。フロントが軽いことと、バネ下重量が削られた効果だろう。

アクセルペダルが、第2のステアリングのように機能することも美点。右足の角度次第で、コーナリングラインを調整できる。

ただし、911 GT3ほど鋭敏なわけではない。99%のドライバーが、不満を感じる差ではないとは思う。だが残りの1%のために、RSの血統を受け継いだモデルが存在することも事実だ。

911 スポーツクラシックは、最高の能力が与えられたスポーツカーであることに疑いようはない。すべての911にも通じる、決り文句ではあるけれど。

21万4200ポンド(約3577万円)の価値があるだろうか。これを理解できる、ひと握りのドライバーのためのポルシェだとはいえる。少なくとも、クラシカルなファッションだけではない、技術的なアップデートも不満なく盛り込まれている。

とはいえ、911としては安くない。価格高騰の波は、ポルシェにも及んでいるようだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ピアス・ワード

    Piers Ward

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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