チャップマンやマクラーレンがベースにしたセブンから、国民車や元祖オフローダーまで 自動車史100年の最強インフルエンサー(2)

公開 : 2026.06.27 17:50

1900年代のフォード・モデルTから1990年代のマクラーレンF1まで、強い影響力を残してきた傑作たち。100年を10年ごとに区切り、各年代から1台ずつ計10台を選出。最強インフルエンサーはどの1台か、UK編集部がジャッジします。

1920年代代表:オースチン・セブン(1922〜1939年)

「実力以上の活躍」という表現が、見事に当てはまるオースチン・セブン。全長は2.8mほどで、車重は381kgという小さなクルマが残した影響は、ベントレー3リッターやブガッティ・タイプ35、ランチア・ラムダなどを確実に凌いだといえる。

第一次大戦後、英国の自動車業界は停滞。1920年には、以前の50%程度へ生産数は減少していた。大排気量エンジンに重税が課せられたことも、追い打ちをかけた。それを目の当たりにしたハーバート・オースチン氏は、8か月に及ぶプロジェクトへ着手する。

1920年代代表:オースチン・セブン(1922〜1939年)
1920年代代表:オースチン・セブン(1922〜1939年)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)/マックス・エドレストン(Max Edleston)

果たして、1922年に誕生したのがセブン。165ポンドと安価で、時代遅れになっていたフォード・モデルTより機敏に走り、狭いボディには4名が乗れた。

大手メーカーに先駆けて、ブレーキを前後へ採用。脱着可能なシリンダーヘッドを採用したエンジンは、好燃費で耐久性にも優れた。「経済的で万能的で、身長が大きくても乗れました。世界1周すらできそうに思えたはず」とスティーブ・クロプリーが話す。

サルーンにバン、スポーツカーまで多様なニーズへ

現代的な感覚でも、ボディはしっかりクルマらしい。スピードメーターがドライバーの正面に据えられ、3速MTのレバーが左手にあり、アクセルペダルは右足で。1920年代初頭は、画期的だったに違いない。走りも、100年前の生まれとは思えないほど軽快だ。

「英国で初めて、平均的な年収で買えるクルマでした。家族の一員として、売りに出されたんですよ。フランスではローゼンガルト、アメリカではバンタム、ドイツではBMWがディクシーとして販売もしています」とピーター・スティーブンス氏が説明する。

1920年代代表:オースチン・セブン(1922〜1939年)
1920年代代表:オースチン・セブン(1922〜1939年)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)/マックス・エドレストン(Max Edleston)

タニア・ブラウン氏は、モータースポーツへの影響力へ注目する。コリン・チャップマン氏やブルース・マクラーレン氏といった名ドライバーが、セブン・ベースのスペシャル・スポーツカーで腕を磨いた。

サイモン・キッドストン氏が付け加える。「サルーンからバン、スポーツカーまで、あらゆるニーズに対応する仕様がありました。これで160km/hも出せたんですから」

協力:英国自動車博物館

1930年代代表:フォルクスワーゲンビートル(タイプ1/1938〜2003年)

人気投票ならトップになりそうな、フォルクスワーゲン・ビートル(タイプ1)。今でもファンは少なくない。60年以上も基本設計を守り、2150万台以上が生産された。

だがその歴史は、決して明るいものではない。ナチス・ドイツのアドルフ・ヒトラーが、技術者のフェルディナント・ポルシェ氏との会談で、ドイツ語で国民車を意味する、フォルクスワーゲンのアイデアを着想したことは、広く知られる事実だろう。

1930年代代表:フォルクスワーゲン・ビートル(タイプ1/1938〜2003年)
1930年代代表:フォルクスワーゲン・ビートル(タイプ1/1938〜2003年)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)/マックス・エドレストン(Max Edleston)

建設が進むアウトバーンを、家族5人を乗せて100km/hで走れるクルマが目指された。価格は、当時の平均的なドイツ人労働者の31週間分の賃金へ相当する、1000ライヒスマルク以下を想定。そこから、斬新な設計は導かれた。

丸く弧を描くボディは、当時の常識を覆した。アルミ製で空冷の水平対向4気筒エンジンは耐久性と整備性に優れ、前後とも独立懸架式のサスペンションは、先進的な構造にあった。そのプロトタイプは、1935年に路上を走っている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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