貴重なFR V8のビッグクーペ BMW M8 コンペティション・クーペへ試乗 小変更

公開 : 2022.08.11 08:25  更新 : 2022.10.14 11:47

Mモデルのトップに君臨するビッグクーペ、M8。貴重なV8エンジンのFRモデルを、英国編集部が評価しました。

表面的な変更が中心のマイナーチェンジ

BMW M8 コンペティション・クーペは、624psを発揮する4.4L V8ツイン・ターボエンジンを搭載したBMW Mのトップモデル。拡大を続けるMのラインナップにあって、新鮮さを保つべくマイナーチェンジを受けている。

といっても、内容は表面的なものが中心。モデルイヤーのリフレッシュ程度といって良いだろう。

BMW M8 コンペティション・クーペ(英国仕様)
BMW M8 コンペティション・クーペ(英国仕様)

M8 コンペティション・クーペが獲得したものは、新しいフロントバンパーとボディカラー、アルミホイール、装飾トリム類のオプションなど。ダッシュボード上のインフォテインメント用モニターも、ひと回り大きいものへ置き換わっている。

BMWは、7シリーズと8シリーズを真の高級車として受け止めて欲しいと考えている。プレミアムな3シリーズや5シリーズより、大きいサイズのモデルというだけではなく。

つまりM8は、真の高級スポーツカーやグランドツアラーという位置づけ。試乗車の英国価格は、約2万ポンド(約330万円)のオプションが載り15万50ポンド(約2475万円)と、確かにお値段でもアストン マーティンヴァンテージに並ぶ。

ベントレー・コンチネンタルGTの領域にも迫る。というわけで、評価のハードルも一段上がることになるのだが。

本物のMとして、もう1歩の詰めが欲しい

マイナーチェンジ後でも、M8の個性や能力に大きな違いは生まれていない。少々辛口な評価だが、スポーツカーとしてもグランドツアラーとしても、もう1歩の詰めが欲しいことに変わりはない。

基本的に、動力性能や加速力はスーパーカー水準に高い。グリップ力も凄まじく、安定性も突出しており、高次元の領域へさほど難しくなく迫ることができる。

BMW M8 コンペティション・クーペ(英国仕様)
BMW M8 コンペティション・クーペ(英国仕様)

4.4LのV8エンジンと8速ATに加えて、76.3kg-mの極太トルクと、四輪駆動システムがその近づきやすさを叶えている。最大トルクは1800rpmから発揮され、6000rpm近くまで持続される。そのエネルギーを、4本のタイヤで受け止める。

8速ATは滑らかに変速を繰り返し、高速域での振る舞いにも感心させられる。だが、みなぎるパワーはさも当然のように自然に発揮される。

エンジンやエグゾーストのサウンドも、不気味なまでに静か。解き放つことを躊躇しているように。

正確な操縦性と予想しやすい挙動には、感心させられる。それでも、小さくないボディサイズと軽くない車重によって、郊外のカーブの続く道を完全には攻略しきれない。運転へ没頭する興奮までには至らない。

数年前にサーキットを走らせた際は、奥深い能力に唸らされた。だが公道の速度域では、Mモデルとしては刺激が抑え気味。本物のMモデルだと考えると、ドライビング体験には一層の訴求力があっていい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーク・ティショー

    Mark Tisshaw

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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