ロータス仕様にV6エンジン版も フォード・コルティナ Mk1からMk5まで5世代比較 後編

公開 : 2022.10.23 07:06

誕生60年を迎えた英国の定番乗用車、フォード・コルティナ。ロータス仕様からクルセイダーまでを、英国編集部が振り返ります。

駆動系の多くがMk3から流用されたMk4

現オーナーのロジャー・チナリー氏が、フォード・コルティナ Mk3購入への経緯を振り返る。

「古いフォードを売りたいという女性から、経営するアフォーダブル・クラシック社に電話があったんです。彼女は、コルティナ以外に詳しいことはわかっていませんでした。2ドアのGXLだとは予想していませんでしたよ」

フォード・コルティナ 2000GXL(Mk3/1970〜1976年/英国仕様)
フォード・コルティナ 2000GXL(Mk3/1970〜1976年/英国仕様)

「インテリアの状態は良かったものの、ボディは修理が必要でした。その時にブラウンからメイズ・イエローへ塗り替えています。エンジンはフォード・カプリ用の2.8Lへ載せ替え、5速MTに変更し、パワステを追加してあります」

初期のコルティナ Mk3は、サスペンションノイズや乗り心地に不満も出た。しかし、チナリーは少し大げさだと考えている。

「確かに乗り心地は硬めですが、初期のスプリングの方が印象は優れていると思います。後期モデルはスプリングがソフトになりましたが、ボートのように揺れも小さくありません」

YKH 129Jのナンバーで登録されたコルティナ GXLは、今でもウエストラインが美しい。オレンジというカラーが、一層印象を強めている。

Mk3登場から6年が経過した1976年、フォードはコルティナ Mk4を発売。駆動系はMk3からの流用が多かったものの、ドイツ人デザイナー、ウーヴェ・バーンセン氏のクリーンなスタイリングで新世代感を醸し出した。

フォードがパワフルな仕様を計画しているという噂は、ケルン・ユニットと呼ばれた2.3L V6エンジンで叶えられた。GLとS、ギアというグレードのオプションに設定された。

V6エンジンのMk4 2.3Sは476台のみ

1970年代後半になると、英国企業の経営部門は会社からの貸与車両として、大型サルーンの下級グレードではなく、小型サルーンの上級グレードを中間管理職へ充てがうようになっていた。そこにケルン・ユニットはハマるとフォードは考えた。

V6エンジンを積むコルティナ 2.3Sには、4速MTのみの設定。ホイールはスポーティで、ボディも勇ましい。しかし、排気量が大きくパワフルが故に自動車保険も高かった。結果的には、476台しか製造されていない。

フォード・コルティナ 2.3S(Mk4/1976〜1979年/英国仕様)
フォード・コルティナ 2.3S(Mk4/1976〜1979年/英国仕様)

現存は2台といわれ、ALY 331Sのナンバーを付けたサイモン・ホア氏のクルマは、その1台のようだ。彼が購入したのは2016年で、丁寧にレストア済みだ。「工場出荷時の色はローマン・ブロンズという茶色。買った時はイエローでした」

彼は2.3Sをオリジナルカラーで塗り直すことを決め、シグナル・アンバーをチョイスした。1978年だけ選べた特別なカラーだ。

V6ケルン・ユニットは力強く、滑らかに回転する。パワーステアリングが標準装備という点も、2.3Sの強みだった。そのかわりフロントが重く、テールは流れやすいという。

上質なエンジンの印象はスポーティな性格付けより、オプションにオートマティックが設定されていた、ギア仕様の方が似合っていたといえる。とはいえ、魅力的なMk4であることに変わりはない。

オレンジとブラックのツートーン・インテリアに、ドライビングランプという組み合わせのコルティナは、今でもドライバーの気持ちをそそる。台数が売れなかった過去が残念に思える。

記事に関わった人々

  • 執筆

    アンドリュー・ロバーツ

    Andrew Roberts

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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