ロータス仕様にV6エンジン版も フォード・コルティナ Mk1からMk5まで5世代比較 前編

公開 : 2022.10.23 07:05  更新 : 2024.03.26 07:44

誕生60年を迎えた英国の定番乗用車、フォード・コルティナ。ロータス仕様からクルセイダーまでを、英国編集部が振り返ります。

ケント・エンジンで武装したコルティナ

1962年9月、英国フォードはアングリア 105Eより上のクラスに該当する、新モデルを発表した。当初はコンサル 225を名乗る予定だったらしい。しかし最終的に、上層部は1956年の冬季オリンピックが開催された地名に由来する名前、コルティナを与えた。

実際のところ、スキーリゾートとのイメージ的なつながりは薄く、英国市民の日常的な暮らしへ浸透していった。お隣と壁が連続した住宅の前が、定番の駐車位置になった。

左からブルーのフォード・コルティナ・クルセイダー(Mk5)、オレンジのフォード・コルティナ 2000GXL(Mk3)、ホワイトのロータス・コルティナ(Mk1)、ライトブルーのフォード・コルティナ(Mk2)、オレンジのフォード・コルティナ 2.3S(Mk4)
左からブルーのフォード・コルティナ・クルセイダー(Mk5)、オレンジのフォード・コルティナ 2000GXL(Mk3)、ホワイトのロータス・コルティナ(Mk1)、ライトブルーのフォード・コルティナ(Mk2)、オレンジのフォード・コルティナ 2.3S(Mk4)

ロータスの魔法的な技術力によって、サーキットでは伝説も築き上げた。ブライアン・ハーヴェイ氏がオーナーの、1964年式ロータス・コルティナを眺めていると、ジム・クラーク氏やジャッキー・スチュワート氏など、名ドライバーの姿が自然と思い浮かぶ。

アメリカ・ミシガン州に拠点を構えるフォードは、モータースポーツでブランドの知名度を高める5年プロジェクトを1960年代初頭に実施。マーケティングに長けたドライバー、ウォルター・ヘイズ氏に計画の立案を託した。

1962年の夏、資金繰りに苦労していたロータスは、コルティナ・デラックスを開発車両として受領。半年後の1963年1月23日、ロータスが開発に関わったコンサル・コルティナが発表される。その秋には、レース参戦のホモロゲーション車両としても認められた。

1558ccツインカム「ケント」エンジンで武装したコルティナは、当時の小型ファミリーカーとしては桁違いの能力を発揮。内側のタイヤを浮かした三輪走行状態で、サーキットのコーナーを鋭く旋回する姿に多くの市民は魅了された。

誇張されたイメージ以上のクルマ

その頃は、ACBC(アンソニー・コーリン・ブルース・チャップマン)のエンブレムを貼った、ロータス風コルティナを英国の町中で目にする機会も少なくなかった。一般的な1200スタンダード・グレードをベースに、グリーンのサイドストライプを入れて。

だが、ハーヴェイのロータス・コルティナは本物。CNO 510Bのナンバーで登録された1台を1978年に購入し、1984年から1996年にかけて徹底的なレストアを施している。

ロータス・コルティナ(フォード・コルティナ Mk1/1963〜1966年/英国仕様)
ロータス・コルティナ(フォード・コルティナ Mk1/1963〜1966年/英国仕様)

「ロータスが設計した、Aブラケット付きのリア・サスペンションが付いています。これは、1965年以降はリーフスプリングへ置換されたアイテムです」

「1980年代から1990年代に開催された、1965年以前のサルーンカー・チャンピオンシップ・レースに向けた装備も組んでいます。調整式のショックアブソーバーや、高い剛性のスプリングなど。リアのブッシュで、車高も変えられますよ」

「リアアクスルのケースは強化品で、ブレーキライニングもレース用。キャブレターの吸気音やエンジンのノイズが、これらすべてを価値のある内容にまとめていると思います」。ハーヴェイが熱意的に説明する。

「ロータス・コルティナは、誇張されたイメージ以上のクルマだと思います」。こんな血気盛んなクルマが乗用車として売られていたのだから、素晴らしい時代だった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    アンドリュー・ロバーツ

    Andrew Roberts

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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