復活スズキ・エスクード 持ち味は? ハイブリッド化で、SUV戦国時代に存在感を示せるか

公開 : 2022.10.28 12:03  更新 : 2022.10.28 12:18

今年、「スズキ・エスクード」がストロング・ハイブリッド車に生まれ変わりました。アウトドア趣味をもつユーザーなら知っておきたい1台をレポートします。

スズキのフルHV どんなシステム?

スズキのハイブリッドといえばISG(スターター/ジェネレーター)を用いたマイルド・ハイブリッドを思い浮かべるが、エスクードに採用されたシステムは電動走行も可能としたフル(ストロング)ハイブリッド。

電動走行や駆動アシスト、効率的な回生を行うモーターを新たに加えて、本格的なパラレル式ハイブリッドとしている。

フルハイブリッドを手に入れ復活したスズキ・エスクード(写真の外装色は、スフィアブルーパール/グレー2トーンルーフ)
フルハイブリッドを手に入れ復活したスズキ・エスクード(写真の外装色は、スフィアブルーパール/グレー2トーンルーフ)    前田惠介

また、ミッションにAGSを使用しているのも特徴の1つ。

AGSはMTのクラッチ/変速制御を自動化したAMTであり、変速時以外の走行時のエネルギーロスがMTと変わらないのが特徴。AT系統では最も効率のいいミッションの1つ。

現行型から乗用車型プラットフォームを採用し、全長は4.2m弱。

コンパクトSUVに分類されるモデルであり、搭載エンジンもNA仕様の1.5Lを採用する。高い最低地上高設定(185mm)や悪路用4WD制御の採用により同カテゴリーでは比較的優れた悪路対応力もセールスポイントだ。

褒めたいAMT 変速/低速について

ちなみにコンパクトSUVの多くはハイブリッド車をラインナップしているが、ハイブリッドで4WD車のみの設定になるのはエスクードだけである。

ただ、ガチのオフローダーのジムニーシエラやSUVパッケージングを活かしてタウン&レジャー向けにキャビン実用性を高めたクロスビーと比較参照すると、エスクードのポジションやコンセプトも理解しやすいだろう。

スズキの四輪制御システム「ALLGRIP」は、シフトレバーの手前のつまみで操作。「AUTO」「SPORT」「SNOW」「LOCK」という4つのドライビングモードを用意した。
スズキの四輪制御システム「ALLGRIP」は、シフトレバーの手前のつまみで操作。「AUTO」「SPORT」「SNOW」「LOCK」という4つのドライビングモードを用意した。    前田惠介

AMTの欠点の1つは、変速タイムラグ。

黎明期のAMTでも一般的なドライバーがMT車で変速するのに比べれば所要時間は短いのだが、「アクセルを踏み込んだ状態」での失速は短時間でも違和感に繋がるのだ。

ところが、エスクードのAGSは違和感を覚えるほどのタイムラグはない。DCTやトルコンATに比べても変速タイムラグに著しい時間差はなかった。

だからといって変速ショックが大きいわけではない。電動駆動介入の効能か失速感もほとんどない。滑らかさではトルコンATに及ばず少々ラフな部分もあるのだが、EV走行の恩恵もありクラッチ式自動変速のATの弱点となる極低速の扱いもスムーズ。

AMTとしては傑出した変速制御である。

ハイブリッド/電動の味付けは?

ただし、ハイブリッド車としては電動感が少ない。

もちろん、EV走行時は電動そのものだが、走行の大半は6速ATの内燃機車相応。パラレル式ハイブリッドでは珍しくもないのだが、電動アシストを強く意識させないのは内燃機と補完し合うようなアシスト制御の巧みさである。

スズキ・エスクード(スフィアブルーパール/グレー2トーンルーフ)
スズキ・エスクード(スフィアブルーパール/グレー2トーンルーフ)    前田惠介

ハイブリッドの有り難みは動力性能の余裕。車重は1.3t超。

NA仕様1.5Lでは厳しいはずなのに、試乗中に“非力感”を覚える事はなかった。

実用域に限定するなら1.8L級と変わらないパワーフィールであり、前述の扱いやすいドライバビリティもあって汎用性の高い動力性能を示した。

現行型は2015年に発売され、2021年に一旦日本での販売を終了している。つまり、新型エスクードは再デビューモデルということになる。

とはいうものの、新開発のフルハイブリッドの採用もあり、パワートレインは大きく進化。スズキ独自のハイブリッドシステムもあり、受けた印象は意外と新鮮だった。

ただ、フットワークの洗練感は設計年度の古さを意識させる。と述べておいて何なのだが、クルマの雰囲気に不似合いとも思えないのが悩ましい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    川島茂夫

    Shigeo Kawashima

    1956年生まれ。子どものころから航空機を筆頭とした乗り物や機械好き。プラモデルからエンジン模型飛行機へと進み、その延長でスロットレーシングを軸にした交友関係から自動車専門誌業界へ。寄稿していた編集部の勧めもあって大学卒業と同時に自動車評論家として自立。「機械の中に刻み込まれたメッセージの解読こそ自動車評論の醍醐味だ!」と思っている。
  • 撮影

    前田惠介

    Keisuke Maeda

    1962年生まれ。はじめて買ったクルマは、ジムニーSJ30F。自動車メーカーのカタログを撮影する会社に5年間勤務。スタジオ撮影のノウハウを会得後独立。自動車関連の撮影のほか、現在、湘南で地元密着型の写真館を営業中。今の愛車はスズキ・ジムニー(JB23)
  • 編集

    徳永徹

    Tetsu Tokunaga

    1975年生まれ。2013年にCLASSIC & SPORTS CAR日本版創刊号の製作に関わったあと、AUTOCAR JAPAN編集部に加わる。クルマ遊びは、新車購入よりも、格安中古車を手に入れ、パテ盛り、コンパウンド磨きで仕上げるのがモットー。ただし不器用。

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