史上最高の跳ね馬の1台 フェラーリ F355 英国版中古車ガイド 高い維持費はつきもの

公開 : 2022.12.15 08:25

1990年代のヒット作となったV8フェラーリのF355。傑作スーパーカーの魅力と注意点を、英国編集部がご紹介します。

新車当時は過去最も売れたフェラーリ

1990年代、進むべき道に少し悩んでいたフェラーリ。量産モデルに対する評価は優れず、モータースポーツでは精彩を欠いていた。

CEOに就任したルカ・ディ・モンテゼーモロ氏は、魅力に溢れる情熱的な量産モデルが必要だと理解していた。ブランドに対する信仰心を、再び喚起することが求められた。1989年に登場した348を凌駕する、ドライビング体験の提供が不可欠だった。

フェラーリF355(1994〜1999年/英国仕様)
フェラーリF355(1994〜1999年/英国仕様)

マラネロが1994年に生み出した公道用モデルは、その理想的な回答になった。市場は魅力へ共感し、1万1552台がラインオフ。当時のフェラーリとしては、過去最大の台数が売れたモデルになった。

モンテゼーモロ氏の期待に、応える以上の内容だったのかもしれない。近年でも、史上最高のフェラーリの1台として評価は高止まりしている。プロポーションやボディシェル、リアのサブフレームなどは348と共有していたが、中身はまったくの別物といえた。

F355といえばシンプルなボディラインと、リトラクタブル・ヘッドライトを備えるフロントノーズを持つ、ピニンファリーナ社によるスタイリングが特長といえる。同時に、3.5L V8エンジンも魅惑的な存在だった。

自然吸気でドライサンプで、フラットプレーン・クランクが組まれ、心を揺さぶる8500rpmまで躊躇なく回った。最高出力は348の25%増しとなる385ps、最大トルクは36.9kg-mを叶えていた。

バランスに長けたシャシーで操縦性も秀逸

1気筒に5バルブという設計はF1譲り。鍛造アルミニウムを用いたピストンに、チタン製コンロッドを採用している。その結果エンジンは軽量で、車体の乾燥重量も1380kgに留まった。

バランスに長けたシャシーには、軽く回せるステアリングと電子制御ダンパーが組まれ、操縦性も秀抜。美しいゲートで仕切られた6速MTは扱いやすく、身近な環境で跳ね馬を謳歌することを可能としていた。

フェラーリF355(1994〜1999年/英国仕様)
フェラーリF355(1994〜1999年/英国仕様)

さらに、オプションとしてフィオラノ・パッケージも用意。車高を落としトレッドを拡大することで、一層鋭敏な身のこなしを得ることもできた。

1997年には電動油圧式のセミオートマティック、6速「F1マチック」が登場する。これは、他のチームに先駆けF1マシンにシフトパドルを導入した、スクーデリア・フェラーリにちなんだネーミングだ。

能力に長けたF355は、モータースポーツでも活躍。チューニングされたF355によるワンメイクレース、F355チャレンジ・シリーズが1995年にスタートしている。現在のフェラーリ・チャレンジ・シリーズへと受け継がれる、人気カテゴリーの基礎を築いた。

F355のボディスタイルは、クーペのベルリネッタとタルガトップのGTSというラインナップだったが、同じ1995年には電動ソフトトップを得たスパイダーが登場。好調な販売を後押ししている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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