史上最高の跳ね馬の1台 フェラーリ F355 英国版中古車ガイド 高い維持費はつきもの

公開 : 2022.12.15 08:25

ある程度の不具合と高い維持費はつきもの

早いもので登場から既に30年近くが経つため、F355もクラシック・フェラーリとして考えていい。ある程度の不具合と、高めの維持費はつきものとして捉えたい。

慎重に過去の整備記録を確認し、状態を精査し、ベストといえるF355を発見できれば、生涯飽きることのないであろう至高のドライビング体験を堪能できる。美しいボディやV8サウンドだけでも、鑑賞する価値はある。将来の投資にもつながるはずだ。

フェラーリF355(1994〜1999年/英国仕様)
フェラーリF355(1994〜1999年/英国仕様)

新車時代のAUTOCARの評価は

F355は画期的なフェラーリだ。属するクラスに留まらず、格上のモデルを凌ぐほどの能力を備えている。ディーノ 246 GT以来となる、フェラーリ最高のスポーツカーとして讃えていい。

見事な完成度の高さは、マクラーレンF1の価格が7倍もすることへ疑問を投げかける。過去に評価してきたクルマでは、前例のないことだ。(1994年10月19日)

フェラーリF355(1994〜1999年/英国仕様)
フェラーリF355(1994〜1999年/英国仕様)

購入時に気をつけたいポイント

エンジン

V8ユニットは比較的堅牢ながら、1996年より以前のF355に用いられているブロンズ製のバルブガイドが摩耗しやすい。オイルが燃焼し、重大なエンジントラブルを招くことにもつながる。

それ以降はスチール製に変更され、強度が増している。ディーラーでどちらなのか確認しておきたい。シリンダーの圧縮比テストで、バルブガイドの摩耗具合をチェックできる。

フェラーリF355(1994〜1999年/英国仕様)
フェラーリF355(1994〜1999年/英国仕様)

F355のエンジンは燃えることがある。出火を理由にリコールも出されており、対応済みか確認したい。タイミングベルトの交換は3年毎。エンジンのリビルドには、英国では数1000ポンド(100万円前後)の予算を準備する必要がある。

エグゾースト

セラミック触媒コンバーターには寿命がある。専門ガレージでの修理も可能だが、アフターマーケット製の交換部品で対応も可能。一部のオーナーは触媒レスにしていることもあるが、車検は通らない。

エグゾースト・マニフォールドにはヒビが入ることがある。早めに修理しないと、完全に割れてしまう。信頼性を取るならアフターマーケット製となるが、純正部品より割高だ。

排気ガスの流量を調整する、バイパスバルブが故障することがある。こちらもアフターマーケット製での対応が可能。解決策として、バルブを常時オープン状態にしてしまうのも手だ。

ルーフ

タルガトップの場合は、ウエザーストリップから雨漏りしがち。シリコンオイルでしなやかさを高めてある程度は防げるものの、交換した方が確実。

スパイダーでは電動ソフトトップの動作を確かめる。開閉時にシートを前方へスライドさせる必要があるが、ポジションセンサーが故障すると動かなくなる。油圧ポンプも不具合を招きやすく、交換は高く付く。可動部分には定期的に潤滑油を指したい。

サスペンション

可変ダンパーの上部にあるアクチュエータが故障しがち。交換は難しくない。

インテリア

ダッシュボードのレザーは、高温状態が長く続くと収縮して裂けてくる。全体を張り直すしか対策はなく、費用も掛かる。樹脂製のセンターコンソールまわりは表面がネバつく。こちらも安くは原状復帰できない。

シフトノブの塗装は剥がれやすく、ノブの交換が手っ取り早い。ヒーターバルブやエアコンは故障しがち。安く修理できないので、事前に動作を確認したい。

ボディ

ベルリネッタとGTSでは、キャビン後方のバットレスがリアウィングと接する部分で腐食する。再塗装で対応可能だが、定期的に再発する。リアサブフレームなどは表面が錆びやすい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

関連テーマ

おすすめ記事

 

フェラーリの人気画像