トラックになっていた公道の王者 ヴォグゾール 20HP Aタイプ(2) 伝説のワークス仕様を忠実再現

公開 : 2026.03.15 17:50

世界初のスポーツカー、20HP Aタイプ レースで証明された性能や耐久性 ワークス・マシンを再現した量産車 1910年代に公道の王者と呼べた速さ 伝説の精巧なレプリカをUK編集部がご紹介

トラックとして使われていたAタイプ

英国のヴォグゾール本社と連絡を重ね、ニュージーランドのウォルター・スコット氏は、本家のワークスマシンと同様の改良をYタイプへ加え続けた。1912年には南島のブライトンビーチで、時速68マイル(約109.4km/h)の最高速記録を残している。

その年末に、彼は新しいヴォグゾールを購入し、Yタイプは翌年に売却される。だが丁寧に乗り継がれ、レースを競いつつ、100年以上が経った今も生き抜いているという。現在は、このブランドへ詳しいジャック・ニューウェル氏が維持している。

ヴォグゾール 20HP Aタイプ(Yタイプ・ワークスマシン・レプリカ/1908~1915年)
ヴォグゾール 20HP Aタイプ(Yタイプ・ワークスマシン・レプリカ/1908~1915年)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

他方、今回の1910年式ヴォグゾール 20HP Aタイプの現オーナーは、アレックス・ヘイワード氏。初期の歴史は不明ながら、50年ほど前にニューウェルらによって発見されている。クライストチャーチの農場でトラックとして使われ、状態は酷かったらしい。

しばらくそのままの状態で保管されるが、1990年代に入ると、ヴォグゾールを得意とする英国のアリスデア・ロックハート氏の元へ。再起の道を進み始めた。

ワークス仕様のYタイプ・ボディを忠実に再現

14年前にヘイワードが購入した時点で、シャシーは概ねレストアされ、ドライブトレインは8割ほど残っていた。公道への復帰が目指されたが、課題は山積みだった。1910年に作られたボディは、完全に失われていた。

そこで、ワークス仕様のYタイプへ架装されたスポーツレーサー・ボディを忠実に再現したのが、英国のウェスタン・コーチワークス社。当時の詳細なスケッチを入手し、コンピュータを活用し設計され、アルミ板と木材のアッシュ材で仕上げられた。

ヴォグゾール 20HP Aタイプ(Yタイプ・ワークスマシン・レプリカ/1908~1915年)
ヴォグゾール 20HP Aタイプ(Yタイプ・ワークスマシン・レプリカ/1908~1915年)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

作業にはオーナーの息子、オーランド・ヘイワード氏も協力。ホワイト&ポッペ社製キャブレターの調整システムまで、見事に作り込まれている。

ほぼオリジナルと呼べる、ウッドスポーク・ホイールのセンターキャップには、ヴォグゾールのロゴ。手掘りで丁寧に刻まれている。ウォルター・スコットのYタイプへ敬意を表すため、ラジエターには同じ「V」のペイントが施されている。

上下左右が逆さまのHパターン・ゲート

無駄のない端正なボディは、シャシーへ充分低くマウントされているが、ダッシュボードが載るスカットルは低い。走り出せば、上半身へ盛大に風が当たる。世界初のスポーツカーと呼べるヴォグゾールを運転することなど、滅多にない機会だろう。

サイドバルブの4気筒エンジンを始動するには、まず4本のシリンダーへ僅かにガソリンを注がなければならない。だがその後は、クランキングさせてマグネトーをオンにし、再びクランキングすれば勢い良く目覚める。アイドリングの回転数は、かなり高い。

ヴォグゾール 20HP Aタイプ(Yタイプ・ワークスマシン・レプリカ/1908~1915年)
ヴォグゾール 20HP Aタイプ(Yタイプ・ワークスマシン・レプリカ/1908~1915年)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

エグゾーストから、低い唸りが放たれる。高度な潤滑システムにより、エンジンオイルの燃焼は少なく、排気ガスはほぼ透明。アクセルペダルは、左側のクラッチと、右側のブレーキの間にあるボタン状のもの。発進時は、深く踏む必要がある。

シフトレバーは、露出したHパターンのゲートから伸びる。現代のものとは上下左右が逆さまで、1速が右側の手前だ。コーンクラッチの割に、滑らかに繋がる。トルクが太く、ニュートラルで一息つくダブルクラッチを挟めば、意欲的に速度上昇していける。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

ヴォグゾール 20HP Aタイプの前後関係

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