世界初の「スポーツカー」 ヴォグゾール 20HP Aタイプ(1) 最高出力40ps 強豪ワークスマシンを量産化

公開 : 2026.03.15 17:45

世界初のスポーツカー、20HP Aタイプ レースで証明された性能や耐久性 ワークス・マシンを再現した量産車 1910年代に公道の王者と呼べた速さ 伝説の精巧なレプリカをUK編集部がご紹介

世界初のスポーツカー:20HP Aタイプ

「スポーツカー」という言葉が世界で初めて用いられたのは、ヴォグゾール(後の英国オペル)が1911年に製作したC10プリンス・ヘンリーだといわれる。だが筆者は、20HP Aタイプこそ相応しいと考えている。

それは、1908年の国際ツーリングカー・トライアルへ参戦したマシンで、パーシー・キドナー氏が駆ったYタイプの量産版。車高が低い2シーターで、姿は美しかった。

ヴォグゾール 20HP Aタイプ(Yタイプ・ワークスマシン・レプリカ/1908~1915年)
ヴォグゾール 20HP Aタイプ(Yタイプ・ワークスマシン・レプリカ/1908~1915年)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

1903年には、ロンドンの南で自動車の生産を始めていたヴォグゾールは、2年後に100kmほど北のルートンへ移転。当時はまだ、蒸気船のエンジンを生産していた、ヴォグゾール&ウエスト・ハイドロリック・エンジニアリング社の一部門だった。

だがキドナーと、友人のレスリー・ウォルトン氏により分社化され、ヴォグゾール・モーターズ・リミテッドが1907年に創業。2人は社長と会長へ就任し、主任技術者としてFW.ホッジス氏が、アシスタントとしてローレンス・ポメロイ氏が招聘される。

性能や耐久性を証明したモータースポーツ

クルマの黎明期に、性能や耐久性を証明するうえで、モータースポーツは重要な手段になった。20世紀初頭の英国では、各メーカーが競うトライアルやヒルクライムといったレースが、各地で頻繁に開かれていた。

ホッジスは、オイルを加圧し循環させるクランクシャフトの潤滑機構を開発。オイルの消費を抑えることに成功したが、初期のヴォグゾール 12-16用ユニットのエンジンブロックは分割式で、ヘッドも効率が悪い形状だった。最先端の技術とはいえなかった。

ヴォグゾール 20HP Aタイプ(Yタイプ・ワークスマシン・レプリカ/1908~1915年)
ヴォグゾール 20HP Aタイプ(Yタイプ・ワークスマシン・レプリカ/1908~1915年)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

最高出力は、当初の23psから27psへ向上していたものの、1907年に挑んだスコットランド・リライアビリティ・トライアルでは、12-16は14台中の8位と振るわなかった。

これを受けキドナーは、翌シーズンへ向けた新エンジンの開発をホッジスへ命じる。その結果誕生したのが、4気筒のYタイプ・ユニット。ストロークは従来から1インチ(約25mm)伸び、排気量は3139ccへ拡大された。

ワークス・マシンを再現した量産の新モデル

4本のシリンダーを包むブロックは一体鋳造され、ポメロイが設計した新ヘッドを採用。潤滑システムとボッシュ社製マグネトー(電磁誘導による点火装置)を継承しつつ、ギア比を選べる3速マニュアルが組まれた。シャシーやブレーキも強化された。

果たして、2つのレースで競われた1908年の国際ツーリングカー・トライアルで、ワークス仕様のYタイプは大活躍。初戦のスコットランド・リライアビリティ・トライアルで優勝し、次戦の2000マイル・トライアルではシルバーカップを獲得している。

ヴォグゾール 20HP Aタイプ(Yタイプ・ワークスマシン・レプリカ/1908~1915年)
ヴォグゾール 20HP Aタイプ(Yタイプ・ワークスマシン・レプリカ/1908~1915年)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

この戦績を、ヴォグゾールが活用しない選択はなかった。トライアルへ挑んだYタイプを再現した新しい量産モデル、A09型、20HP Aタイプを翌月に発表する。

しかも、スペックはワークスマシンを僅かに上回った。排気量は3054ccへ僅かに減らされつつ、ホワイト&ポッペ社製キャブレターは継投。Yタイプと同じメタルコーン・クラッチが組まれ、4速MTのトップギアでは、1000rpm当たり39km/hで走行できた。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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