【連載:清水草一の自動車ラスト・ロマン】#26 アクセル全開!その時、驚くべきことが起きた!!

公開 : 2026.01.09 12:05

自動車はロマンだ! モータージャーナリストであり大乗フェラーリ教開祖の顔を持つ清水草一が『最後の自動車ロマン』をテーマに執筆する、隔週金曜日掲載の連載です。第26回は『アクセル全開!その時、驚くべきことが起きた!!』を語ります。

私には残された任務があった!

大貴族号(筆者が所有する先代マセラティクアトロポルテ)はいろいろ整った。

警告灯はすべて自然治癒し(つまり誤作動)、秋田への特攻遠征も無事完遂。塗装のハゲは塗り直したし、内装のベタベタ(ネチャネチャ)も許せるレベルまで剥した。とりあえず、やれることはやった感じがする。

大貴族号こと筆者が所有する先代マセラティ・クアトロポルテは、いろいろ整った!
大貴族号こと筆者が所有する先代マセラティ・クアトロポルテは、いろいろ整った!    清水草一

しかし私には、残された任務があった。それは、アクセル全開加速である。

大貴族号はフェラーリ・エンジンを積んでいる。フェラーリ・エンジンなのに、まだ一度もアクセルを全開にしたことがないのである。なぜって怖いから!

これまで私は、すべてのフェラーリでアクセルを全開にしまくってきた。フェラーリ・エンジンは、アクセル全開でレッドゾーン寸前まで回してこそ神が見える。フェラーリを買ってアクセルを全開にしないのはバカ! これ以上の宝の持ち腐れはないっ!

なのに私は、大貴族号だけは、怖くてアクセルを全開にできない。理由はふたつある。

1:マセラティはフェラーリより断然壊れやすい気がするから。
2:大貴族号の納車寸前、愛機のフェラーリ328が炎上したから。

特に2のトラウマは深刻で、以来、フェラーリも全開にできなくなった。だって首都高でアクセル全開にしたら、オイルがピューッと漏れて火が着いちゃったんだもん。人間、走行中にクルマが燃えるとすげぇビビるよホント。

やるぞやるぞ!

しかし、いつまでもトラウマを引きずるわけにもいかない。いい加減克服しないと、カーマニアとして残念すぎる。

秋になって涼しくなったことだし、そろそろやらねばならんだろう。やるぞやるぞ! 大貴族号でアクセル全開にするぞ! 首都高に出撃だ!

かつて筆者が所有したフェラーリF355のアフターファイアー!
かつて筆者が所有したフェラーリF355のアフターファイアー!    フォッケウルフ

秋の夜。今宵も大貴族号の4.2リッターV8は、なんの問題もなく目覚めた。購入以来、機関は完全にノートラブルだ。壊れる壊れると思っていると壊れないものなのだろうか。

そもそも先代マセラティ・クアトロポルテ前期型は、クルマとしてどうなのか?

そういうインプレッション的なことを一度もちゃんと書いていないが、かいつまんで申しますと、まず重い(車両重量2トン)。この『重い』という印象は、エンジンの低速トルクが薄いことで倍加されている。ただし、重い割にノーズの入りは軽い。こっちはやっぱり、トランスアクスルがもたらす重量配分の良さ(前後47:53)が効いてるんだろう。

エンジンはさすがフェラーリ製で、4000rpmくらいまで回せば、控え目な音量で官能的なサウンドを奏でる。加速も、それくらいまで回せばそれなりに鋭くなる。

しかしまぁ、全体としてはぜんぜん速い感じはない。最近のクルマは低速トルクがメチャ太いので、アクセルをちょっと踏んだだけで吹っ飛ぶように加速するが、そういうのに比べると、ものすごく遅い。この遅さは、フェラーリで言うとF355だろうか。低速トルクがスッカスカで、上までブチ回してようやくなんとかなる感じが若干近い。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    清水草一

    Souichi Shimizu

    1962年生まれ。慶応義塾大学卒業後、集英社で編集者して活躍した後、フリーランスのモータージャーナリストに。フェラーリの魅力を広めるべく『大乗フェラーリ教開祖』としても活動し、中古フェラーリを10台以上乗り継いでいる。多くの輸入中古車も乗り継ぎ、現在はプジョー508を所有する。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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