フェラーリ株価暴落前日、イタリア現地取材で思ったこと(後編) 投資家に左右される経営の行方【不定期連載:大谷達也のどこにも書いていない話 #4】
公開 : 2026.03.12 11:45
エンジニアと自動車専門誌編集者という経歴で膨大な取材量を持つ大谷達也による、『どこにも書いていない話』を執筆する不定期連載です。第4回は、昨年開催されたフェラーリのワークショップとキャピタル・マーケッツデイがテーマ。その後編です。
ブランドを守り続けようとする意識
ご存知のとおり、フェラーリのスペシャルシリーズはマニア垂涎のモデル。これが欲しくてフェラーリのカタログモデルを買い続けているフェラリスティは、決して少なくないとされるほどだ。
そうした、フェラーリにとっては大きな利益の源でもあるスペシャルシリーズだからこそ、この機関投資家は「もっと増やすべき」と問い質したのだろう。

しかし、フェラーリ側はその考え方を明確に否定した。つまり、限定モデルであるスペシャルシリーズを大量に売ればスペシャルシリーズの価値が下がるだけでなく、引いてはブランドの価値が下がると回答したのである。
それも、会社のCEOやセールスマーケティング担当役員ではなく、本来は儲けを追求すべき最高財務責任者(アントニオ・ピッカ・ピッコン)がそう答えたことに、私は深い感銘を受けた。
つまり、財務部門を含めたフェラーリ社内の隅々までに、自分たちのブランドを守り続けようとする意識が徹底している。であればこそ、いまのフェラーリのポジションを築き上げることができたのであろう。そして彼らの長期的なバリューが安泰であるようにも思えたのである。
こうして、2日間のプログラムを終えた私は満足しきっていたのだが、その翌日の報道は目を疑うようなものだった。フェラーリの株価が暴落。しかも、上場して以来、最大の落ち幅だったというのである。
経済系メディアの論調
経済系メディアの論調は共通していた。BEVの製品化計画が弱含みだったことと、利益の将来的な伸び率が鈍化していることを嫌ったというのだ。
先ほども述べたとおり、BEVのモデルミックスを40%から20%へと下方修正したのは市場の現状を正しく反映した結果であって、不当に弱気なものではない。むしろ、この判断は会社の利益を拡大するのに役立つはずだと、自動車産業界に身を置く者なら誰もが感じ取ったことだろう。

ところが、機関投資家たちは「BEVの販売台数を増やすことこそが正義」という、10年前とまったく変わらないものの見方をしていたのだ。
一方で、利益の伸び率予想がこれまでの実績を下回ったのは事実である。
例えば2019年から2025年までのEBITDA(利払い前、税引き前、減価償却前利益)を見ると、おおむね年率10〜19%ほどの成長率で推移してきたのに対し、今回のキャピタル・マーケッツデイでは2030年のEBITDAを360億ユーロ(約6兆6000億円)以上と予想。これを2025年度の実績(約277億ユーロ/約5兆1000億円)と比較すると、年率平均でおよそ6%の成長率となる。
なるほど、伸び率は鈍化しているが、絶対的には今後の5年間でEBITDAをさらに30%も拡大する目標を掲げているのだ。これをネガティブと捉える投資家たちの心理が、私には理解しがたい。





























































