ラストは600psで350台 アキュラ(ホンダ)NSX タイプSへ試乗 走りで深い記憶を刻む 前編

公開 : 2022.12.16 08:25

優れた能力を備えつつ、販売が伸び悩んだ2代目NSX。350台限定の最終仕様の仕上がりを、英国編集部が確認しました。

アイルトン・セナが磨いた初代のシャシー

素晴らしい完成度のスーパーカーが、間もなく最後を迎える。もっと筆者も称賛すればよかったと、どこからともなく罪悪感が湧いてくる。こんな結果を招くとは、予想していなかった。

2代目となるNC1型のホンダNSXは、このタイプSの350台をもって生産を終える。太平洋から日が昇る日本ではなく、トウモロコシ畑から日が昇る、アメリカ・オハイオ州の工場で。

アキュラ(ホンダ)NSX タイプS(北米仕様)
アキュラ(ホンダ)NSX タイプS(北米仕様)

初代NSXの後継モデルとして、新たに生まれ変わったNSXは期待に応える内容を備えていた。注目すべき特徴もふんだんに盛り込まれていた。だが、それともお別れだ。

1990年に発売されたオリジナルのホンダNSXは、イタリアン・スーパーカーの維持に数千ドルを費やしていた時代に誕生した、革命児的な存在だった。オーバーヒートの心配はなく、定期的に起きるメカニズムの故障とも無縁だった。

フェラーリにとってのF40と同じくらいのインパクトが、ホンダのNSXにはあった。本田宗一郎氏によって推し進められた、意欲的なプロジェクトだった。

黄金期にあった同社の精鋭によって素晴らしい設計が施され、伝説的F1ドライバーのアイルトン・セナ氏によってシャシーは磨き上げられた。ホンダらしく、われわれに親しみやすいスーパーカーだった。

レーシングカー・デザイナーのゴードン・マレー氏も、1台初有していた。マクラーレンF1の開発時には、毎日のように乗っていたという。

大型ターボなどで最高出力は600psへ

2代目NSXがデビューしたのは2015年。ところが、ホンダはNSXへの羨望を集めることに苦労した。フォードが同じタイミングで新型スーパーカーのGTを発表したことも、多少は影響しただろう。

NSXの価格は、マクラーレン級に高くなっていた。生産された北米では、見慣れたベージュ色のサルーン、LTと同じアキュラのエンブレムが付いていた。ホンダではなく。エンジンも、基本的にはLTと同じ75度のバンク角を持つ3.5L V6ユニットだった。

アキュラ(ホンダ)NSX タイプS(北米仕様)
アキュラ(ホンダ)NSX タイプS(北米仕様)

結果的に売れ行きが向上することはなく、2代目NSXは2022年で最後を迎える。アウディも、ランボルギーニ由来のV10エンジンを上品なボディにミドシップした、R8の生産を終える。

モダン・スーパーカーの多くは信頼性が向上し、日常的に乗れるモデルは珍しくない。公道で乗れるレーシングカーなら、ポルシェが911 ターボと911 GT3を提供している。明確な何かが、NSXには必要といえた。

ラストとなるNSX タイプSでは、ハイブリッド・パワートレインの最高出力が581psから600psへ向上している。レーシングカーのNSX GT3エボ譲りとなる大型ターボと、ハイフロー燃料インジェクター、インタークーラーなどにより実現したという。

V6ツインターボ・エンジンのレッドラインは7500rpmで変わらないが、駆動用バッテリーの容量は20%増えている。駆動用モーターへ供給できる電流は、10%高められた。システム総合での最大トルクは67.8kg-mだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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