トヨタbZ4X 詳細データテスト 及第点だが花マルなポイントはなし 本命はステア・バイ・ワイヤか 

公開 : 2023.01.28 20:25

意匠と技術 ★★★★★★★☆☆☆

厳密に言えば、bZ4Xトヨタ初のEVではない。1997年に初代RAV4をEV化したことがあり、数年後には2代目が登場している。量産モデルとしても、すでにレクサスブランドでUX300eが販売中だ。とはいえ、本格的にEVの量販市場へ切り込むという点では、やはりbZ4Xがはじめてのことだと言っていいだろう。

トヨタの大規模なEV計画は、新開発のe−TNGAプラットフォームが基盤になっている。その名がほのめかすように、内燃エンジン用のTNGAと多少は関連性がある。しかし、それが設計面で妥協を強いるほどには近くない。

充電ポートは助手席側のフロントフェンダーに設置。われわれとしては、リア寄りにあるほうが使いやすいと思うが、充電口のカバーが使いにくいゴムキャップではなく、機械式フラップなのは評価したい。
充電ポートは助手席側のフロントフェンダーに設置。われわれとしては、リア寄りにあるほうが使いやすいと思うが、充電口のカバーが使いにくいゴムキャップではなく、機械式フラップなのは評価したい。    MAX EDLESTON

このe-TNGA、前後モーターの位置と、フロント寄りになる運転席の位置、そしてバッテリーの全幅は規定されているが、それ以外のほとんどの要素は変更できる。bZ4Xはスバルが開発に協力し、スバル版のソルテラともども得意の4WD関連技術が生かされている。

バッテリーは、長いホイールベース内のフロア構造部にうまく組み込まれ、容量は71.4kWh。競合の多くが70kWh台後半なのに比べると、やや小さい。今回はbZ4Xもソルテラもバッテリーは1種類のみの設定だが、将来的には容量の異なるものを積んだモデルも登場する見込みだ。

結果として、航続距離もやや物足りない。前輪駆動のエントリーグレードであるピュアは510kmを謳うが、20インチホイールや追加装備が加わるヴィジョンは446kmに落ち込む。テストした2モーターのヴィジョンは417kmで、競合するキアEV6のAWD GTラインSが480kmほどなのには及ばない。

トヨタが用いるバッテリー技術は革新的ではないかもしれないが、それとは別の領域でイノベーションが導入されている。今年後半には、レクサスRZとともに、ステア・バイ・ワイヤを全面導入する初の量産車になる予定だ。

インフィニティ、すなわち日産はこの技術を8年前に実用化しているが、バックアップとしてのステアリングコラムは残されている。トヨタのワンモーショングリップはそこもカバーして、機械的なリンクの必要がなくなっているようだ。

また、インフィニティは一般的な丸いステアリングホイールを使用するが、トヨタは操縦桿のような形状を採用。テスラも同様のデバイスを用いるが、トヨタのものはロックトウロックがたったの150°なので、取り回しの際に丸いリムがなくても切りにくい思いをしなくて済む。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    役職:ロードテスト副編集長
    2017年よりAUTOCARでロードテストを担当。試乗するクルマは、少数生産のスポーツカーから大手メーカーの最新グローバル戦略車まで多岐にわたる。車両にテレメトリー機器を取り付け、各種性能値の測定も行う。フェラーリ296 GTBを運転してAUTOCARロードテストのラップタイムで最速記録を樹立したことが自慢。仕事以外では、8バルブのランチア・デルタ・インテグラーレ、初代フォード・フォーカスRS、初代ホンダ・インサイトなど、さまざまなクルマを所有してきた。これまで運転した中で最高のクルマは、ポルシェ911 R。扱いやすさと威圧感のなさに感服。
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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