森林破壊のないゴムのみを使用 ミシュランのサステナビリティ戦略と新製品をタイヤの達人が解説(前編)

公開 : 2026.06.10 17:25

ミシュランが『サスティナビリティ戦略アップデートセミナー&新製品試乗会』を実施。いつものタイヤ試乗会とは一味違う体験を、タイヤの達人・斎藤聡が前後編に分けてレポートします。前編は、タイヤへの社会的要請とミシュランの取り組みについてです。

タイヤを取り巻く社会的要請を改めて学ぶ

ミシュランが『サスティナビリティ戦略アップデートセミナー&新製品試乗会』と銘打った、タイヤを取り巻く環境のワークショップと、新製品試乗会を組みあわわせたユニークなタイヤ試乗会を行った。

新製品は『パイロットスポーツ5エナジー』と、『プライマシー5エナジー』だ。

リグルーブという、トラックの磨耗したタイヤにもう一度溝をつけて走行距離を延ばす手法の体験グリービング(溝掘り)中の筆者。
リグルーブという、トラックの磨耗したタイヤにもう一度溝をつけて走行距離を延ばす手法の体験グリービング(溝掘り)中の筆者。    ミシュラン

今、タイヤを取り巻く社会的要請は大きく変わりつつある。

具体的には、ユーロ7(車両法規2026年~)によるタイヤの磨耗粉塵の規制、UNECE(国連法規2028年~)でのタイヤの磨耗粉塵規制、EUDR(森林破壊防止規制2026年~)の天然ゴム使用のトレーサビリティ、ESPRエコデザイン規則(2024年~)による環境設計に関する枠組みの規制などがある。

安全性や、単純な省燃費性能だけでは収めきれない様々な社会的要請が大きくなっているのだ。

ユーロ7で初めてタイヤの粉塵問題を規制

現在、欧州では年間50万トンのタイヤ磨耗粒子が発生している。また、森林破壊に関しては、主に熱帯地域での農地転用や違法伐採、森林火災が原因で進行し、地球温暖化の加速、生物多様性の喪失などが問題視されている。

こうしたことを受けて、ユーロ7で初めてタイヤの粉塵問題を規制。段階的な削減が定められ、第一段階として現行レベルの約10%を削減することとなっている。

ミシュランは、自社が販売するタイヤ全体の磨耗性能を10%向上させることをコミットメントしている。

また、森林伐採問題については、天然ゴムに関し、森林破壊ゼロのコミットメントを採択した世界初のタイヤメーカーであり、世界中のタイヤや製品に森林破壊のないゴムのみを使用することを宣言している。

環境への負荷を数値化して比較

今回の試乗会では、こうした講義のほか、タイヤのLCA(ライフ・サイクル・アセスメント)シングルスコアの解説も行われた。

ざっくりとタイヤ製造から廃棄までのサイクルを見ていくと、設計・材料→製造→物流→使用段階→回収・再資源化→設計・材料といった循環になっている。

ミシュランが取り組んでいるサスティナビリティの講義を受講。
ミシュランが取り組んでいるサスティナビリティの講義を受講。    ミシュラン

それぞれの段階にかかる環境負荷を数値化すると、以下のようになる。
設計・材料   13%
製造       1.5%
物流       1%
使用段階    84%
回収・再資源化  1%

現在、『設計・材料』では材料の非石油課由来100に向けた取り組みが行われており、『製造』では化石化燃料依存を減らして、工場内の電力や熱源にバイオマスや太陽光発電などの再生エネルギーを積極的に導入する取り組みが行われている。

興味深いのは『回収と再資源化』で、タイヤ回収率は北米で70~80%、欧州で95%、日本では99.2%と言う高水準にあることだ。

重要なのは低燃費性能とロングライフ性

他方、もっとも負荷の大きいのは断トツで『使用段階』。

こちらは低燃費性能とロングライフ性(≒耐摩耗性)が大きな要素といえる。

まず、走行時のタイヤのエネルギー消費のうち、5分の1がタイヤの転がり抵抗となっている。

また、ロングライフ性では、タイヤの摩耗寿命を2万5000km/本から3万5000km/本に延ばすことができると、仮に20万km走行した場合、タイヤの使用量を8セットから5~6セットに減らすことができる。

タイヤの転がり抵抗低減、耐摩耗性の向上は、タイヤメーカーにとってどれだけ重要な課題となっているかよくわかる数字だ。

それを踏まえて開発された、ミシュランの新製品、パイロットスポーツ5エナジーと、プライマシー5エナジーの具体的な解説は、後編にてご紹介する。

記事に関わった人々

  • 執筆

    斎藤聡

    1961年生まれ。学生時代に自動車雑誌アルバイト漬けの毎日を過ごしたのち、自動車雑誌編集部を経てモータージャーナリストとして独立。クルマを操ることの面白さを知り、以来研鑽の日々。守備範囲はEVから1000馬力オバーのチューニングカーまで。クルマを走らせるうちにタイヤの重要性を痛感。積極的にタイヤの試乗を行っている。その一方、某メーカー系ドライビングスクールインストラクターとしての経験は都合30年ほど。

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