ロールス・ロイス・エンジンで対抗 ヴァンデンプラ 4リッターR ジャガーSタイプ 3.4 最高峰のサルーン 後編

公開 : 2023.02.18 07:06

高評価のエグゼクティブ・エクスプレス

ゆったりと、銀行の支店長が乗るようなプリンセス 4リッターRに対し、ジャガーSタイプ 3.4は若々しい雰囲気を放つ。エグゼクティブ・エクスプレスと表現できる。

上品さという点では及ばないかもしれない。それでも、1960年代にはこのクラスで最高のモデルとして高い評価を集めていた。

ジャガーSタイプ 3.4(1963〜1968年/英国仕様)
ジャガーSタイプ 3.4(1963〜1968年/英国仕様)

全長は4750mmで、プリンセス 4リッターRと大きくは違わないが、車重は35kgほど重い。全幅は僅かに狭く、全高は低く、ホイールベースは約75mm短い。燃料タンクが左右に長く、外観から想像する以上に荷室は広い。

ドアを開くと、適度にタイトながら窮屈ではないインテリアが広がる。一見すると高級感でヴァンデンプラに並ぶものの、観察するとそうでもないことがわかる。シートの表面だけがレザー張りで、それ以外はアンブラと呼ばれる合皮で仕立てられている。

シートは高さ調整できない。リアシートには、折りたためるピクニックテーブルがない。

ダッシュボードの下には荷物棚があり、フロントシートの間にはアームレストも付く。メーター類とトグルスイッチが中央に並び、大きなレブカウンターも備わる。オーナーが自ら運転することが想定されている。対象的な雰囲気だ。

DOHC直列6気筒のXK型エンジンは、ドライなサウンドを放ちながら高回転域まで軽く回る。直接乗り比べると、プリンセス 4リッターRは防音性に優れ、車内は遥かに静かだと気がつく。

意欲的に運転したい気にさせるシャシー

Sタイプ 3.4は、4速MTにパワーアシストなしのステアリングで、市街地では少々扱いにくい。それでも、路面の不整をリムジンのように見事に吸収し、ロードノイズの処理や駆動系の滑らかさでは有利。フォーマルではないが、ラグジュアリーだ。

現代のモデルへ乗り慣れていると、コーナーでのボディロールが大きく始めは少し不安になる。とはいえ、煮詰められたサスペンションで、徐々にアンダーステアへ転じていくシャシーバランスは良好。意欲的に運転しようという気にさせる。

ジャガーSタイプ 3.4(1963〜1968年/英国仕様)
ジャガーSタイプ 3.4(1963〜1968年/英国仕様)

エンジンの回転数を高め、シフトレバーをこまめに動かしたくなる。ジャガーに乗るなら、オートマティックはつまらない。オプションだったパワーステアリングが装備されていれば、一層好ましいスポーツサルーンになるだろう。

駐車時の、Sタイプ 3.4のステアリングホイールの重さは労働に近い。スピードが乗ってくると、楽しいインターフェイスへ一変する。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

ロールス・ロイス・エンジンで対抗 ヴァンデンプラ 4リッターR ジャガーSタイプ 3.4 最高峰のサルーンの前後関係

前後関係をもっとみる

関連テーマ

おすすめ記事

 

ロールス・ロイスの人気画像