2030年までに「30万基」充電インフラ、達成可能? 事業者とメーカーに協力呼びかけ 英国

公開 : 2023.03.05 18:05

英国政府は2030年までに30万基の充電ポイント設置を目標に掲げていますが、当のインフラ事業者は障壁にぶつかっています。EV移行の実現には、業界全体での協力体制の強化が求められます。

政府目標、達成なるか? 業界全体で協力不可欠

英国の大手充電インフラ運営会社は、EV(電気自動車)に関する持続可能なビジネスを構築するために、自動車業界全体で協力体制を強化するよう呼びかけている。

SMMT(英国自動車工業会)は最近、2030年までに30万基の充電ポイントを設置するという政府目標を達成するためには、1日に100基の新設が必要であり、現状では1日29基が限界であると指摘した。

英国の充電インフラ事業者は、送電網への接続において煩雑な壁にぶつかっている。
英国の充電インフラ事業者は、送電網への接続において煩雑な壁にぶつかっている。

この指摘を受け、充電インフラ会社FastnedのUKカントリーマネージャーであるトム・ハースト氏は、2030年までに欧州全域に1000基の高速充電器を設置する計画であり、現在英国内に15か所の急速充電サイトを保有していると述べた。「長期的なビジネスを構築するために必要なのは、メーカーが自動車を販売し、我々が充電するというコラボレーションです」

「SMMTの主張は興味深いものですが、投資のレベルや、充電サイトを送電網に接続して稼働させる際に抱えている問題を反映していません。充電業界全体がまだ組織化されていないと言っても過言ではありませんが、現実には普及を加速させており、送電網への接続を阻む障壁が最大の問題であって、我々のコミットメントや能力ではないのです」

ハースト氏は、全国に展開する配電事業者が送電網に接続するのに時間がかかりすぎるため、サイト開設が遅れていると主張する。「現在、3つのサイトでグリッド接続の準備ができましたが、もどかしいですね。弁護士とダンスをしながら、同時に送電網の運営会社とダンスをするようなものです。滑稽なほど無駄が多いんです」

「我々が直面する最大の障壁は、ほとんどの場合、配電事業者のセットアップに起因しています。あまり見栄えのいい話題ではありませんが、大きな発電所からある場所に電力を供給するためのインフラや管理は、充電ポイント事業者向けにセットアップされているわけではありません。大規模な宅地開発でも同じようなニーズがあるかもしれませんが、3年単位の長い開発スケジュールでは特定の日に変圧器を稼働させることは重要ではなく、あくまでオープン時に稼働していればいいのです」

「それに対して、我々は3か月単位でスケジュールを組んでおり、接続が完了するまでは何もできません。この接続とそれに伴う法的な取り決めが完了するまで、サイトの価値が損なわれてしまうのです。場合によっては、そのプロセスが必要以上に複雑になってしまうこともあります。実利的な場合もあれば、実利とは正反対の場合もあります」

英国のエネルギー担当相であるグラハム・スチュアート議員は最近、送電網接続のスピードアップが「(エネルギー安全保障・ネットゼロ)部門が直面する最大の課題かもしれない」と認めている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジム・ホルダー

    Jim Holder

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    平成4年生まれ。テレビゲームで自動車の運転を覚えた名古屋人。ひょんなことから脱サラし、自動車メディアで翻訳記事を書くことに。無鉄砲にも令和5年から【自動車ライター】を名乗る。「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。イチゴとトマトとイクラが大好物。

関連テーマ

おすすめ記事

 

EVの人気画像